杉本博司による過去最大級の数理模型。サンフランシスコ・イェルバ・ブエナ島に設置
がこれまでも手がけてきた、三次関数の数式を立体的に表現した数理模型シリーズ。そのなかでも最大の作品が、サンフランシスコ・イェルバ・ブエナ島の丘の上に設置された。
同作は、サンフランシスコ・アーツ・コミッション(SFAC)によって495名のアーティストから選ばれたもので、トレジャー・アイランド・アーツ・プログラムの第1作⽬の常設彫刻作品。トレジャー・アイランド開発局は、トレジャー・アイランドおよびイェルバ・ブエナ島再開発のマスター・プランの実施を統括する公的機関であり、マスター・プランの⼀環として、トレジャー・アイランドとその隣のイェルバ・ブエナ島には今後、21世紀のサンフランシスコにおける持続可能な新しい街が形成される。同作は、今後20年にわたるトレジャー・アイランドの開発の先陣を切るものだ。
サンフランシスコ市のスカイライン、サンフランシスコ湾、アルカトラズ、クリッパー・コーヴ・ビーチ、ゴールデンゲート・ブリッジ、ベイエリア全体を⾒渡す360度の眺めが広がる場所に設置されたこの大作は、底面の直径が7メートル、⾼さは21メートルとなっており、直径21ミリの先端部に向かって徐々に細くなっている。⾼さ5.6メートルの位置まではGFRC(ガラス繊維強化コンクリート)のパネル8枚で構成された基部となっており、基部はそのまま鏡⾯加⼯を施した316ステンレスによる上部(15.4メートル)とシームレスにつながり、天に向かって伸びる。この数理模型は巨⼤な⽇時計でもあり、広場には、春分と秋分の南中時に影が射す正確な位置を⽰す印が設置される予定だという。
杉本は本作について、「無限(インフィニティ)という概念は、⼈間が発明したものです。無限遠点(ポイント・オブ・インフィニティ)とは1つの逆説です。⾃然界にあるとすれば、宇宙の果てのその向こうにある遠い場所となるはずですが、あるいは⼈間の脳内で⽣み出される幻想でしかないのかもしれません。それでもなお、⼈類はこの幻想を⾒ることにこだわり続けてきたのです。私たちはその営みをアートと呼ぶのです」(プレスリリースより)との言葉を寄せている。「彫刻のフォルムは、互いに近づきながらも、決して交わることのない2つの双曲線によって創られています。物質界において、はるか彼⽅にある無限遠点を特定することは、物理的に不可能です。しかし、数理模型に基づいた直径21ミリの先端部を持つ構造物として近似点を具現化することで、無限を提⽰することは可能です」(同上)。
作品が設置された公園は、今年秋頃に一般オープンが予定されている。