歌麿や写楽、北斎らを見出した江戸のメディア王を描く。次の大河ドラマは蔦屋重三郎が主人公。主演は横浜流星
主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎(1750~1797)は、数々の才能を世に送り出した“江戸の出版王”であり、いまで言う名プロデューサー。
喜多川歌麿や東洲斎写楽といったスター絵師を発掘し、「浮世絵の黄金期」を築いた人物だ。ほかにも葛飾北斎、山東京伝、曲亭馬琴、十返舎一九ら、のちの巨匠となり日本文化の礎を築く者の才能を見出した。
浮世絵版画は、絵師・彫師・摺師の三者の共同制作によって生まれるが、その企画から制作、販売までを担っていたのが「版元(はんもと)」で、現在の出版社にあたるもの。江戸郊外の吉原の貧しい庶民の子に生まれ、幼くして両親と生き別れ、引手茶屋(ひきてぢゃや)の養子となった蔦重は、本屋(貸本屋)から身を興したのちに、出版業を始めた。
重三郎は24歳のとき、吉原の店ごとに遊女の名を記したガイドブック「吉原細見」の出版に参画し、序文の執筆者に平賀源内を起用して注目を集める。のちに蔦屋が「吉原細見」の版元となり出版を独占、頭角を現した。
その後、喜多川歌麿との出会いから、多色摺の狂歌絵本や錦絵などを送り出し、ブランドを確立。蔦屋から出版された美人大首絵が人気を博し、歌麿は現在まで「美人画」の大家として知られることとなった。
また、当時無名であった東洲斎写楽による役者絵を、特別な仕様で28枚も一挙に世に出すという、大胆な出版も行った。写楽は約10か月の短い期間のみ活動し姿を消したとされる謎の多い絵師だが、いったい蔦重は何を考えてこのようなことをしたのか? 本ドラマでどのように描かれるのか期待が高まる。
また寛政の改革では、その表現が大きく規制されることにもなった。NHKの公式サイトには「松平定信による寛政の改革では、蔦重の自由さと政治風刺は問題になり、財産の半分を没収される処罰を受ける。周囲では江戸追放や死に追いやられるものもあらわれる…蔦重は、その後も幕府からの執拗な弾圧を受け続けるが、反権力を貫き通し、筆の力で戦い続ける」との説明があるので、蔦重の戦いにも注目したい。