棋士育成「関西の時代」、七冠の藤井竜王も巣立つ…熱心な師匠の力で関東勢を逆転
奨励会は日本将棋連盟の機関で、棋士志望の少年少女が入会し、原則、26歳までに四段(プロ)になれなければ退会となる。東京の関東奨励会に約100人、大阪市の関西奨励会に約90人が所属し、6級~三段の間で昇級を争う。東西のトップ級がそろい、プロへの最終関門となる三段リーグ(現在40人)は年2回あり、1位か2位、または3位が2回で棋士に昇格する。
2000年以降、両奨励会からの昇格者数は▽00~04年 関西3、関東17▽05~09年 関西8、関東14▽10~14年 関西8、関東13▽15~19年 関西9、関東12▽20年~ 関西12、関東4と関西勢が急伸した。
関西勢の昇格者は2000年、ゼロだった。その頃の関西将棋会館では、対局を終えた奨励会員が雑談し、テレビで野球や競馬を見ていることもあった。
「君たちはたるんでいる」。01年、関西奨励会を監督する幹事になった畠山 鎮(まもる)八段(54)は会員を一喝した。幹事ら棋士は日々、練習対局や研究で会員と共に将棋盤を囲んだ。関東よりも日常的に行い、日が暮れるまで勉強に打ち込む会員が増えた。
06年に棋士デビューした糸谷哲郎八段(34)=元竜王=は「『あいつが昇段するなら自分も』と必死に上を目指す環境で過ごせた」と感謝する。後に竜王や名人などを獲得する豊島将之九段(33)や現在七冠の藤井聡太竜王(20)らも巣立った。
関西を拠点とする熱心な師匠も多く、森信雄七段(71)が現役棋士12人、小林健二九段(66)は8人、井上慶太九段(59)は7人を育てた。今、三段リーグには三つの門下で計10人が在籍。九州や中国地方の有望な若者が、関東ではなく、強い関西に集うようになった。
日本将棋連盟専務理事の脇謙二九段(62)は「勝負事はわずかな頑張りの差で明暗が分かれる。関東も必ず巻き返すだろう。より高いレベルで後進を育てる時代が来た」と歓迎している。