日本茶の新たな楽しみ方を提案する〈瀧爪〉で、整う茶室体験を。
コーヒー、お茶などの嗜好品には、目覚めさせる、リラックスさせる、などいろいろな効果がある。瀧爪では、“整える”ための日本茶を提案する。その体験の場として、品川の一軒家の中に茶室〈瀧爪〉を開設した。ネーミングの由来は主人の名前からではあるが、「瀧」には流れが森を浄化するように、お茶が体の中を流れ、浄化してほしいというメッセージが、「爪」は枝に留まり羽を休める鳥のイメージから、忙しく動き回る人々にここでゆっくり一息ついてほしいという願いが込められている。
茶室では、〈調ふ茶〉として120種ほどの茶葉から選んだ主に九州地方産の茶3種と、それに合わせて季節ごとに主人が考案し、手作りする菓子のペアリングを提供する。九州産が多いのは、「進歩的な姿勢で茶づくりに取り組む農家が多いから」と主人は言う。
〈調ふ茶〉は夏の季節、ゆっくりと水出しした釜炒り玉緑茶から始まり、まろやかなほうじ茶、そして締めはしっかりと旨味のある蒸し製玉緑茶で組み立てられている。蒸し製玉緑茶は甘いご飯のような香りが立ち上り、締めにふさわしい茶。煎茶に自家製柚子シロップを添えることもある。
「オーソドックスな緑茶や日本茶の飲み方だけでなく、現代の嗜好に合った日本茶の楽しみ方を提案したいんです。日本通の外国人であっても、すぐにしめ鯖鮨を食べることはできないでしょう。カリフォルニアロールのような日本茶が合ってもいいと思うんです」
こうしたお茶に対する型にはまらない主人の姿勢は長い海外暮らしから生まれた。
茶と菓子のコースだけでなく、朝活ならぬ、朝食にも力を入れている。土日の朝に提供される〈福の茶〉コースは、焼き魚、副菜、漬物の一汁三菜から成り、すべて主人がひとりで料理している。キャベツの和え物にはターメリックを忍ばせ、しば漬けの素材には茄子ではなく、キュウリを使うなどオーソドックスな和食に変化球を投げ込む。