京都で自主夜間学校「いいあす京都」開校へ 公立との両輪、学びの場目指す
◆「学びたい」応えるため
「学習者もスタッフも、みんなが手を取り合って学び、『良い明日』を作る場所にしていきましょう」
2月上旬、京都市北区で開かれた設立準備委員会で、代表の川端宏幸さん(61)が決定したばかりの校名に込めた思いを語ると、出席者から大きな拍手が起こった。「いい」には、英語で教育を意味する「Education」の頭文字の意味も含まれているという。
戦争や貧困、家庭の事情などで義務教育を受けられなかった人や外国人、不登校などで形式的に中学校を卒業した人らが通い、「教育のセーフティーネット」となっている夜間中学には、大きく分けて公立の夜間中学と民間のボランティアらが運営する自主夜間中学(自主夜間学校)がある。
中学の卒業資格を得られる公立夜間中学は京都市の市立洛友中を含め15都道府県に40校あるが、入学にあたっては居住地や最低通学日数、在籍できる上限年数など公立ゆえの条件や制約がある。「毎日通うのは無理だけど学びたい、公立を卒業したがもっと学びたいという声に応えたい」との思いから、洛友中の元教員である川端さんら有志が昨秋から設立準備を始めた。
◆「少しずつでも学習」
「いいあす京都」では年齢や学歴、居住地などを問わず希望者を受け入れ、ニーズに合わせてスタッフとの1対1や少人数の体制で学習をサポートする。1月以降、開校準備を知った20~70代の男女4人が早速訪れ、1~2週に1回のペースで2時間程度、英語や算数、日本史などの勉強を始めている。
中学卒業後、配送業の仕事に就いている石田響さん(22)は「勉強をもう少ししたいという思いがあった」と話し、外国人に道案内ができるようになりたいとの思いから、英語の学習を希望した。
「間違ってもいいからまず使うことが大事」。大学教員のボランティアから助言を受けた石田さんは、発音を繰り返したりノートにメモをしたりしながら熱心に授業を受け、「ちょっとずつでも学習を続けていきたい」と力を込めた。
「学びのニーズは人によって異なる。公立の夜間中学と補完し合いながら、それぞれの人が自分の可能性を追求できる学びの場を作り上げていきたい」と川端さん。いいあす京都は、同市北区の京都府部落解放センターを会場に開校する。ホームページも近く開設を予定し、学習希望者や指導にあたるボランティアを募っている。問い合わせは事務局(075・415・1032)。(杉侑里香、写真も)
【夜間中学の種類と特徴】 公立夜間中学は、教員免許を持っている公立中学校の教員が教え、平日毎日授業が行われる。卒業すれば中学校の卒業資格が得られる。居住地や学歴、在籍年数などで入学や通学に条件がある。自主夜間中学は民間レベルの取り組みで、週1~2回程度の運営が多い。公的な卒業資格は得られないが、ボランティアのスタッフが学習者の要望、ペースに応じて支援する。