悪い夢、吸い取って希望吹き込む 児童文学「トーメイくん」出版
トーメイくんのほかトーメイ族の長老や、作家志望の文学青年、輸送船の船長らが登場する。人間には姿が見えず、夜中にこっそり笛の音に合わせて人々の悪夢を吸い取るトーメイくんだが、屋敷に住む女の子ビバにはなぜかその姿が見える、というストーリーだ。
田辺さんは東京大文学部を卒業後、講談社(東京)勤務を経てドイツに留学。イギリス出身のイラストレーター、ロイさんと結婚し、1978年に故郷の鹿児島に戻った。カリナさんは高校まで鹿児島で暮らし、現在はイギリスでデザイナーとして活動している。
田辺さんは、児童文学「ふたりのロッテ」などで知られ、ナチスに抵抗したドイツの作家、ケストナーの影響を受けて自ら児童文学の執筆を思い立ち、約3年かけて今回の作品を仕上げた。出版は初めて。水彩画の挿絵約50点はロイさんとカリナさんが担当した。
田辺さんは「子どものころの心を覚えていれば権威を振りかざすような大人になるはずはないし、絶望したときも本当の自分を取り戻して助けてくれる。人を助ける小さな『トーメイくん』を通じて、子どものころの幸せや希望の力を描きたかった」と話している。
A5判、96ページ。ニジノ絵本屋(東京)刊。1980円。【西貴晴】