発達障害や不登校…多様な背景の生徒を大阪府立高2校で重点支援へ 地域と連携し社会性育む
府立西成高(大阪市西成区)と岬高(大阪府岬町)を、新たな学びを実践する「多様な教育実践校」に指定。それぞれが抱える障害や困難にかかわらず、一人一人が必要な支援を受けながら他の生徒とともに学び合える環境を構築する。
具体的には、地場産業に携わる地域の職人らを外部講師に招き、ものづくりを体験する授業などを想定。授業の運営は教員が行うが、前段階としての講師の開拓や調整は新たに採用する「地域連携コーディネーター」が担う。地域と学校の窓口となる地域連携室に常駐する。5年度は、先行実施として単発の授業や部活動などの形で導入し、6年度から学校独自の年間を通じた教科などとしてカリキュラムに取り入れていく。
背景には、社会性を身につける機会がないまま地域で就労した高卒生が職場で孤立したり、早期離職するケースが全国的に多い実態がある。地域と連携した体験的な学びを通じ、生徒の社会性や職場感を育むとともに、生徒や学校について地域の理解を深め、早期離職を防ぐねらいがある。
このほか、さまざまな事情を抱える生徒の悩みに対応できるスクールカウンセラーを府立高としては初めて常駐させる。1クラス30人程度の少人数学級とし、一人一人を手厚く支援していく。
府教育庁の担当者によると、地域活性化の一環で外部人材による授業などを行う学校はあるものの、校内に地域連携室を置いて、地域とともに生徒を育む取り組みは全国でも珍しい。
信州大学教育学部の高橋知音教授(臨床心理学)は「社会に出る前の段階で、失敗を経験しながら社会的な経験を積むことは有効だ」と取り組みを評価。生徒自身が自らの得手不得手を把握し、自身が働く上でどういった配慮が必要なのかを知ることが、自立には不可欠だという。また生徒を受け入れる企業や組織にとっても「子育てや介護など、多様な事情を抱えた社員に目を配るきっかけになる」とし、双方にメリットがあると強調している。(木ノ下 めぐみ)