笑いあり、涙あり… 戦後の尾道を照らした女性劇団、再現へ 広島
プロジェクトの中心メンバーで、尾道で活動する美術作家の横谷奈歩さん(46)=東京都=によると、星劇団は1946年結成。演じるのは10~20代の女性だけで、男性は裏方に徹した。地区にあった劇場「衆楽座」を拠点に剣劇や歌劇のほかオリジナルの演目も上演し、刑務所も慰問した。舞台には進駐軍が捨てた空き缶をくり抜いて作った星の飾りがきらめき、すし詰めの床が落ちたこともあったという。解散後衆楽座は60年に焼失。現在では地区でも星劇団を知る人は少ない。
◇着想から10年
横谷さんは2013年、市立大生と地区の民俗学調査をした際に星劇団があったことを知り、現代によみがえらせようと決意。地区で聞き取りを重ねるなど約10年をかけて風化しつつあった歴史を掘り起こし、市立大の小野環准教授らとともに舞台を再現するプロジェクトを立ち上げた。
劇は2部構成で市立大生らが出演。第1部は星劇団の結成から全盛期までの紹介、第2部は当時の演目をアレンジした歌って踊るエンターテインメント。舞台に向け大学生らは光明寺会館で稽古(けいこ)に励んでいる。
劇団の活動は10年間で幕となったが、当時を尋ねる横谷さんにある元劇団員(故人)は「観客からは笑い声が上がり、また、すすり泣きが漏れ、舞台と観客が一体となり心良いものでした。星劇団は当時の人々の心にどんなに希望の灯と潤いを与えたことでしょう」と手記を寄せ、別の元団員は「人生で一番幸せでした」と懐かしんだ。横谷さんは「戦中戦後をたくましく生きた女性たちがいたことを知ってほしい」と話している。【渕脇直樹】