王将戦で敗れた羽生九段「改善してまた次に」 藤井五冠を前に100期ならず
羽生九段は平成元年に初タイトルを獲得し、8年に全7冠(当時)を独占した。29年には同一タイトルを一定数獲得することで得られる永世称号を7つそろえた「永世七冠」を達成した。タイトル獲得数は通算99期となったが、30年の竜王戦で防衛できず無冠に。令和3年度の勝率は3割台に落ち込み、棋士生活で初の年度負け越しを経験した。
しかし今年度は6割5分3厘(11日現在)に復調し、王将戦の挑戦者を決める挑戦者決定リーグでは6戦全勝して挑戦を決めた。
王将戦開幕前の藤井王将、羽生九段の公式戦の対戦成績は藤井王将の7勝1敗だった。参加するタイトル戦をすべて制してきている藤井王将との七番勝負は、年齢差もあって藤井王将有利との見方もあった。
しかし、第4局まで2勝2敗のタイと競り合い、第5局は敗れたものの、先手番で圧倒的な勝率を誇る藤井王将に対し、後手番の羽生九段が形勢を押し戻す場面もあった。
藤井王将と戦った今シリーズを振り返った羽生九段は「いろいろな変化や読み筋が出てくるので、対局していて大変ではあったが、非常に勉強になったところもあった」と語った。
「100期に挑む最後のチャンスかもしれないと、この七番勝負にかける思いに並々ならぬものを感じた」と振り返るのは、「週刊将棋」元編集長の大阪商業大学公共学部助教、古作登さん。「指し手を見て自分の集大成をぶつけているとひしひしと伝わってきた。経験にとらわれず、古いと思われるところは更新し、人工知能(AI)も取り入れ、最先端についていっている。もう感動しかない」と羽生九段をたたえた。(中島高幸)