ケリス・ウィン・エヴァンスからアルフレド・ジャーまで。今週末に見たい展覧会ベスト7
今年4月に東京の草月会館1Fにあるイサム・ノグチ設計の石庭「天国」を舞台に新作を披露し、大きな注目を集めたアーティスト、ケリス・ウィン・エヴァンス。その個展「
L>espace)(...」が、東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で始まっている。
ケリス・ウィン・エヴァンスは、文学、映画、美術、天文、物理など幅広い分野における先人達の先駆的な試みに関心を寄せ、ネオンを用いた作品を制作することで知られる。その作品は、写真的イメージや、ネオンで示されるテキスト、光、音、ヴィデオなどを通じて、「空間におけるかたちの顕在化」を探求することで高く評価されている。
本展では、パリのフォンダシオン
ルイ・ヴィトンが開館前の2007年に収集した5作品を展示。明るいガラス張りの空間を生かした展示は、すべての作品が外部空間に溶け込むように配置されているのが大きな特徴であり、ネオンの作品も人工光をあえて目立たせるのではなく、自然光と混ざり合うように意図されている。レポート記事は
こちら。
会期:2023年7月20日~2024年1月8日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5
電話番号:0120-00-1854
開館時間:12:00~20:00
休館日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準ずる
料金:無料
創造性が生まれる場を探る。「アートセンターをひらく 2023―地域をあそぶ」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
ギャラリーを「アートが生まれる場」ととらえる企画展「アートセンターをひらく」の第2弾が、7月22日に水戸芸術館現代美術ギャラリーで開幕する。
本展は、水戸芸術館の隣に開館する市民会館の門出を祝い、「地域」と「あそぶ」をテーマに同館から周辺地域へつながることを目指すもの。当館現代美術センターの「アートセンター」としての特徴をふまえ、ギャラリーを「展示と鑑賞」に加えてアートセンターの「創造」の役割を前面に押し出し、アーティストや地域の人々の創造性が引き出されるような場をひらく。
主会場となる当館現代美術ギャラリーでは、「地域」と「あそぶ」をキーワードにコレクション作品を展示し、そして地域の団体や市民と協働してきたプロジェクトを紹介。また、来場者が会期中いつでも気軽に参加できるワークショップなども用意され、予定調和の枠を超えた新しいシーンが生まれていくことが期待される。
会期:2023年7月22日~10月9日
会場:主会場 水戸芸術館現代美術ギャラリー/連携会場 水戸市民会館、京成百貨店ほか
電話番号:029-227-8111
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:水戸芸術館現代美術ギャラリー 月(ただし9月18日、10月9日開館)、9月19日/京成百貨店 8月23日、9月13日、10月4日
料金:パス一般 900円 / 団体(20名以上) 700円 / 大学生以下、70歳以上、障害者手帳所持者は無料
版画を通じて400年を超える旅。「版画家たちの世界旅行―古代エジプトから近未来都市まで」(町田市立国際版画美術館)
町田市立国際版画美術館が、「版画家たちの世界旅行―古代エジプトから近未来都市まで」展を7月22日より開催する。
古くから西洋の版画家は、「旅」から作品のインスピレーションを得てきた。芸術家としての修業や仕事だけでなく観光、社会の変化など、旅立つ理由は様々だが、険しい山を馬車で越え、大海原を帆船で渡る旅には大きな危険が伴うことが少なくなかった。19世紀には、鉄道や蒸気船の普及に伴い版画家たちの行動範囲はヨーロッパを越え、これまで見過ごされてきた身近な自然風景やにぎやかな都市生活にも光が当てられるようになる。
本展では、同館のコレクションから西洋版画を中心に、旅や移動に関わる16~20世紀の作品を約160点展示。古代文明発祥の地であるエジプトから、多くの芸術家を魅了したイタリア、都市と自然が共存するイギリスやフランス、そして高層ビルの建ち並ぶアメリカ・ニューヨークまで、400年のときを超える世界旅行が一堂に堪能できる機会だ。
会期:2023年7月22日~9月24日
会場:町田市立国際版画美術館
住所:東京都町田市原町田4-28-1
電話番号:042-726-2771
開館時間:10:00~17:00(土日祝~17:30、最終入場は閉館30分前)
休館日:月(ただし9月18日は開館)、9月19日
料金:一般 800(600)円 / 大・高生400(300)円 / 中学生以下無料 ※( )内は20名以上の団体料金
ヒロシマを今日の問題としてとらえる新作に注目。「アルフレド・ジャー展」(広島市現代美術館)
世界最初の被爆地である広島市が、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を美術を通して世界へ訴えることを目的とし、3年に一度授与してきたヒロシマ賞。1989年に創設され、第11回ヒロシマ賞の受賞者となったアルフレド・ジャーの受賞記念展が広島市現代美術館で行われる。
ジャーは1956年チリ・サンティアゴ生まれ。建築と映像制作を学んだのち、82年に渡米し、以後ニューヨークを拠点に活動している。80年代半ばには、写真とライトボックスを用いた作品や、屋外の広告掲示板を用いた作品を発表し、一躍注目を集めた。以来、一貫して世界各地で起きた歴史的な事件や悲劇、社会的な不均衡に対して、綿密な調査に基づくジャーナリスティックな視点を持ちながら、写真、映像、さらには建築的な空間造形を伴った、五感に訴えかけるようなインスタレーションが特徴的な作品を発表してきた。
日本で初めての本格的な個展となる本展では、ジャーのこれまでの代表作とともに、ヒロシマを今日の問題としてとらえるような新作を展示し、その創作活動の全貌を紹介する。ジャーのインタビュー記事は
こちら。
会期:2023年7月22日~10月15日
会場:広島市現代美術館
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
電話番号:082-264-1121
開館時間:10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日
料金:一般 1300円(1000円) / 大学生 950円(750円) / 高校生・65歳以上 650円(500円) /
中学生以下無料 ※()内は前売り及び30名以上の団体料金
日常を越えた世界へと誘う。「うえののそこから『はじまり、はじまり』荒木珠奈 展」(東京都美術館)
ニューヨークを拠点に幅広い表現活動を続けているアーティスト・荒木珠奈(1970~)。その初となる回顧展「うえののそこから『はじまり、はじまり』荒木珠奈
展」が、7月22日に東京都美術館で始まる。
荒木は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観を用いた作品を制作。光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、日常を越えた非日常の世界へと誘うような作品で知られている。
本展では、これまでに国内外で発表された詩情豊かな版画や立体作品をはじめ、2022年に東京都美術館のプログラムとして、ウクライナなど様々な国のルーツを持つ子供たちと共同制作したインスタレーションやメキシコの先住民と共同制作した絵本、鑑賞者参加型のインスタレーションなど、初期作品から近作までの約90点以上に加え、開催地である「上野の記憶」に着想を得た大型インスタレーションの新作が一堂に展示される。
会期:2023年7月22日~10月9日
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03-3823-6921
開館時間:9:30~17:30(金~20:00)
休館日:月(ただし8月14日、9月18日、10月9日は開室)、9月19日
料金:一般 1100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円 / 高校生以下は無料
坂茂設計の空中禅道場で現代アートを楽しむ。奈良祐希個展「samādhi」(禅坊 靖寧)
淡路島にある、プリツカー賞を受賞した建築家・坂茂が設計した「禅坊
靖寧」を舞台に現代アーティスト・奈良祐希の個展「samādhi」が開催される。会期は7月23日~8月6日。
奈良は、350余年の歴史を誇る⼤樋焼⼗⼀代⼤樋⻑左衛⾨を⽗に持ち、祖⽗である10代⽬(現・⼤樋陶冶斎)は工芸界存命唯一の⽂化勲章受章者でもある。大樋家の⻑男として⽣まれ、伝統工芸の継承者となる宿命だが、建築家・現代アーティストとして、歴代とは異なる独自の路線を歩んでいる。
本展では、奈良の代表作《Bone Flower》と新作《Bone
Flower_Nest》に加え、淡路島の神秘的な大自然からインスピレーションを受けた最新作《Synapse》を発表。全長100メートルのウッドデッキを有し、360度の全方位に広がる淡路島の絶景と溶け込る独特な会場で、奈良の制作を楽しんでほしい。
会期:2023年7⽉23⽇~8⽉6⽇
会場:禅坊 靖寧
住所:兵庫県淡路市楠本字場中2594-5
開館時間:開催日によって異なる ※事前予約推奨
定休日:7月27日、8月1日
京都画壇を代表する日本画家の心象風景。特別展「木島櫻谷─山水夢中」(泉屋博古館東京)
近代の京都画壇を代表する存在として近年再評価が進む日本画家・木島櫻谷(このしま・おうこく、1877~1938)。東京・六本木の泉屋博古館東京での特別展「木島櫻谷─山水夢中」が、7月23日に終了する。
明治後半から昭和前期まで、文展帝展で活躍した京都日本画壇の代表的存在である櫻谷。京都画壇の重鎮・今尾景年(1845~1924)に写生を学び、徹底した写生を基礎に、卓越した技術と独自の感性によって叙情的で気品ある画風の作品を数多く生み出した。京都の伝統を継承しながら、西洋画の要素をも取り入れたスタイルが大きく特徴づけられる。
本展は、そんな櫻谷の山水画に着目したもの。屏風などの大作から日々を彩るさりげない掛物まで櫻谷生涯の多彩な山水画に加え、画家の新鮮な感動を伝える写生帖や、収集し手元に置いて愛でた古典絵画や水石も紹介し、櫻谷の根底にあり続けた心の風景を探る。レポート記事は
こちら。
会期:2023年6月3日~7月23日(前期6月3日~25日、後期6月27日~7月23日)
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~18:00(金~19:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 800円 / 中学生以下無料