日常を描くことで生まれる「自由」。森本啓太の新作個展「A Little Closer」が六本木のKOTARO NUKAGAで開催
森本は1990年大阪生まれ。高校卒業後単身カナダへ渡り、16年をトロントで過ごした。その後、2021年より拠点を東京に移し活動を続けている。森本はレンブラントやエドワード・ホッパーを連想させる光の表現を用い、風景や人物を描く。ありふれた街並みや日常の瞬間が、古典的な技術を現代に持ち込むことにより劇世界へと変貌している。
本展は一昨年に開催された国内初の個展「After Dark」以来、森本にとって約2年ぶりとなる日本での個展。新作のペインティング約20点が展示される。
森本の絵画はファンタジーでもなく特別な瞬間でもなく、ありきたりな風景のなかに美しさや神秘性を見出し、描かれた誰でもない誰かが主人公となっている。本展のために制作された新作では、部屋のなかや食事、ショッピングなど、自身と同世代の若者たちのプライベートな空間に入り込む。新作は過去作品と比較するとさらにパーソナルな風景を描き出されており、何気ない日常の1コマがドラマチックな瞬間へ変貌する。
森本作品で描かれる普遍的な景色は鑑賞者の共感を呼び、鑑賞者自身を絵画の当事者とする。社会から与えられた役割ではなく、自分が何者であるのか、何を良しとし、どんな瞬間を美しいとするのかといったことを他者の手に委ねない「自由」を、森本は自身の絵画を通して鑑賞者に提示する。また、森本の絵画は描かれた瞬間の前後や、その背景にある人と社会との様々な関係性を見る者に想像させ、物語を生み出す。