金沢21世紀美術館にて。注目作家アレックス・ダ・コルテ、アジアの美術館初個展
本展は、近年世界で大きな注目を集めるヴェネズエラ系アメリカ人アーティスト、アレックス・ダ・コルテのアジアの美術館で初めての個展。最近作を含めた全11点の映像インスタレーション作品などが紹介される。
アレックス・ダ・コルテは1980年アメリカのカムデン/ニュージャージー州生まれ。現在は同国のフィラデルフィア/ペンシルベニア州在住。2018年ピッツバーグのカーネギーインターナショナルを皮切りに、19年のヴェネチア ・ビエンナーレによって世界的に名が知られるようになり、22年ニューヨークのホイットニー・ビエンナーレにも参加。
欧米各地の美術館で個展を重ね、2021年にニューヨークのメトロポリタン美術館屋上庭園のコミッションに選ばれ、2022年にはルイジアナ近代美術館(フムレベック、デンマーク)において、過去20年間の作品を網羅したサーベイショウ「Mr. Remember」が開催された。
展覧会の冒頭は《最後の一葉》(2022)というネオンを用いた壁掛け作品。この作品は作家にとって重要な「円環」のイメージ、つまり、終わりがありまた始まりがあるということを告げる象徴的な作品だ。アレックス・ダ・コルテは「季節への意識」や「時間がぐるっと回ること」への関心について内覧会で言及し、本作のツタは身体や時間の流れを表すものだという。
つづく映像インスタレーション《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》(2022)も「The End」という言葉から始まる。展覧会の「始まり」に「終わり」があるという、なんとも不思議な螺旋の迷宮に誘われるようだ。
《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》の映像は5幕仕立ての劇からなる。米国のフィラデルフィア美術館にあるコンスタンティン・ブランクーシのためのギャラリーを模したセットを舞台に、作家がマルセル・デュシャンに扮して登場。同館はデュシャンの「大ガラス」があることでも有名だ。その後、命を吹き込まれたブランクーシの《接吻》が歌い、音楽が演奏される。
見た目はファニーだが、その歌はというと「愛」や「喪失」を歌ったドラマティックで切迫感のあるもの。紫色の《接吻》は「色自体が色と向き合うことに気が付き始めている」(黒澤)状態で、紫が赤と青に別れるという別離について感情たっぷりに歌い上げる。
本作のタイトルは虹の7色の頭文字(Red、Orange、Yellow、Green、Blue、Indigo、Violet)を並べたニーモニック(符号)から名付けられているように、色彩は作家にとって重要な要素だ。巨大なキューブ状の本作は、会期中に7回色を塗り替えるパフォーマンスも行われるという。
それぞれの色彩が象徴するイメージや、喚起させる感情に注目しながら、本展を見ていくと面白いだろう。