「Escenci(a)」と記された中国由来の壺、「かくれキリシタン」の信仰対象か
つぼ(高さ25・0センチ、底径14・8センチ)は、禁教期前の16世紀後半~17世紀初め、中国から運ばれた「華南三彩貼花文五耳壺」(華南三彩壺)。彦根藩の井伊家や寺院などが所蔵していた数点が現存しており、いずれも茶道や華道で使われた。
今回のつぼは、かくれキリシタンの信仰を受け継いでいた個人宅で1964年に見つかった。底面には墨で書かれた、スペイン語やポルトガル語で「香油」を意味する「Escenci(a)」の文字があり、県は「聖香油」などを入れたと推測。長崎などで活動したセルケイラ司教が使ったとみられるという。
16日の記者会見で、県は「キリシタンの歴史で分かっていなかったことについて、これをきっかけに大きく研究が発展するかもしれない」と期待感を示した。
県は、21日午後2時から長崎市役所で「新事実判明か! 東樫山キリシタン伝承『華南三彩壺』調査報告会」を開催。東京大史料編纂所の岡美穂子准教授らが、つぼと禁教期以前のキリスト教信仰の関連性について報告する。また、21~23日、同市役所でつぼを特別公開する。
県は2019年度から、潜伏キリシタンの伝統に関する信仰用具の保護と保存継承を図る目的で、文化庁から補助を受けた調査を実施している。