閉幕間近! シュルレアリスムとファッションが交差する「奇想のモード」展へ
本展のサブタイトルには「装うことへの狂気」とある。会場に入るとすぐに虫の死骸や鳥の羽根などを用いたアクセサリー、理想のプロポーションに矯正するためのコルセットや纏足鞋などが展示されており、装いに対する人間の欲望をまざまざと見せつけられる。こうした志向が極まったところで、サステナビリティやボディポジティブが叫ばれるようになったのだろう。着飾ることは楽しく、気分が高揚し、好反応を得るとやりがいにもなる。しかし、それが周囲へ危害を与えることになれば「狂気」となってしまうのだ。
そして「狂気」と併記されていたのが「シュルレアリスム」である。シュルレアリストたちとコラボしていたエルザ・スキャパレッリのコレクションなども見ることができるのだが、サルヴァドール・ダリやジョルジュ・デ・キリコらが1930年代のモード誌のカバーを多く手がけていたのは驚いた。不穏な空気が漂う作品ばかりで、華やかさは全然ない。当時はきっと最先端でおしゃれなアートだったのだろう。
機能性より見た目を重視し、装うことに「やる気」はあるが「狂気」とまではいかず、物事に意味や理由を求める融通のきかない私には不条理な「シュルレアリスム」を受け止める余裕もない。が、本展を訪れた帰りに出会った人が、私の総スパンコールのジャケット姿に驚いていた。自分もはたから見れば、狂気じみた意味不明な格好をしているのかもしれない。
Text:Itoi Kuriyama Edit:Sayaka Ito