特別展「東福寺」(東京国立博物館)レポート。《五百羅漢図》が14年の修理事業を経て初公開
臨済宗の大本山である東福寺は、新緑や紅葉の季節には多くの観光客が訪れている絶景の古刹。
南宋時代の高僧、無準師範の弟子である円爾(えんに/聖一国師)を開山に迎えて創建された、京都を代表する禅寺のひとつ。日本最古、そして最大級の伽藍を持つ寺院で、東福寺とその塔頭には、絵画や彫刻、造物、さらには中国伝来の文物や書物などが残されており、国指定の文化財に指定されているだけでも、国宝は7件、重要文化財は98件に及んでいる。
東京国立博物館と京都国立博物館で開催される特別展「東福寺」は、この東福寺に伝わる寺宝をまとめて紹介する初めての展覧会。本展を担当した東京国立博物館研究員 高橋真作は「東福寺は、膨大な文化財の修復に力を注いできており、これまでまとまったかたちでの展覧会は開催されてこなかった。本展はそんな東福寺の魅力を余すところなく伝える『オールアバウト東福寺』な展覧会」と語った。
展覧会は5章構成。第1章「東福寺の創建と円爾」では、東福寺を創建した円爾ゆかりの宝物を紹介。展覧会冒頭を飾るのは、吉山明兆による《円爾像》。晩年に右目を患った円爾を左側から描いた日本最大級の禅僧肖像画だ。牡丹唐草文様の描き表装の精緻な表現も美しい。
東福寺を開いた円爾は、南宋で禅宗を学んだ。そのため、東福寺には中国伝来の書物や肖像画が多く残されている。国宝《無準師範像》は、円爾の師である中国の高僧、無準師範の肖像画。「南宋肖像画の極地」と称される肖像画で、無準師範像はこの肖像画に自ら賛を描き、円爾に与えた。《円爾宛尺石(板渡しの墨跡)》は、無準師範が円爾に送った寄進への礼状だ。
続く第2章「聖一派の形成と展開」では、円爾の法を伝える後継者(聖一派)らにまつわる書や肖像画などを紹介する。重要文化財《蔵山順空坐像》は、円爾の孫弟子で東福寺第6代住職となった蔵山順空の坐像。肉付きがよく、柔和な顔立ちだ。
展覧会初出品となる《虎 一大字》は円爾の孫弟子で、東福寺第15代住職だった虎関師錬の書と伝えられている。虎という文字なのか、虎の絵なのか、抽象画のようにも見える勢いのある書は、謎めいてもいる。