日本画の過去と未来を探る『シン・ジャパニーズ・ペインティング』とは?
ピカソやモネなど西洋の近代絵画で知られるポーラ美術館は日本画の宝庫でもある。横山大観、杉山寧ら文字通り日本を代表する画家たちの名品を収蔵しているのだ。「シン・ジャパニーズ・ペインティング」展ではこれらのコレクションとともに戦後の日本画や杉本博司ら現代美術の作品まで日本画の流れに着目、独自の解釈を試みる。
展覧会の特徴の一つは日本画の「革新」に光をあてること。線に頼らず“空気を描く”(岡倉天心)「朦朧体」の発明や、色鮮やかな合成顔料による画風の変化などを検証する。とくに杉山寧が探求した厚塗りの技法は画面のマチエールを大きく変え、杉山自身のターニングポイントにもなっている。
西洋絵画と出合った画家たちはそれまでの伝統的な画題や技法に加えて、西洋的な要素も取り入れた。水墨画と油彩画の技法をミックスさせた藤田嗣治はその一人だ。岸田劉生がそれぞれ日本画と洋画の技法と素材で描き分けた絵画の対比もおもしろい。
展覧会には現代作家たちの新作も並ぶ。山本太郎と杉本博司はともに尾形光琳の《紅白梅図屏風》を“本歌取り”した作品を作った。山本の作品ではコカコーラの缶から赤白の水紋が流れ出る。杉本は月光のもと、光琳の屛風を撮影した。深堀隆介はさまざまに改良されて親しまれている金魚をモチーフに制作している。塩でらせん状の模様を描く山本基は展覧会開幕後、現地制作を行う。そのほか火薬ドローイングで知られる蔡國強、マタギ(猟師)をしながら制作している永沢碧衣、加山又造に師事した日系アメリカ人、マコトフジムラらが登場。日本画の多種多様な発展形を見せる。
〈ポーラ美術館〉展示室1-3、 アトリウム ギャラリー。神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285。2023年7月15日~ 12月3日。会期中無休。