藤森照信による国内初の宿泊施設がオープン!
この1日1組限定の宿は、藤森建築の独創性に魅了された個人オーナーが確保した土地の環境を藤森も気に入り、「初めての旅館を素晴らしい場所に設計します」と受諾して計画が具体化した。
約4000平方メートルの敷地は田んぼが広がる農村の一角に突き出た高台で、近くに甲斐駒ケ岳や八ヶ岳が眺められる。定員5名の客室面積は約63平方メートルとコンパクトな平屋だが、高台に船が停泊しているような造形は、藤森建築ならでは。屋根に植栽されたフジザクラの列が地区に古くから生えているシダレザクラの巨木につながり、地上5メートルのテラスからは遠く富士山が望めるなど、周囲の環境と大きなスケールで調和する建築だ。
藤森建築は「縄文建築団」などのワークショップで依頼者を巻き込んで施工を進めるのが常だが、〈小泊Fuji〉建設にあたっては施主の山越典子さんがクラウドファンディングで参加者を募り、屋根葺き材の銅販曲げやワークショップや外壁材の焼杉板ワークショップを開催した。また施主の夫・山越一範さんが本職の大工であるため、各工程の作業に参加した。
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屋根のフジザクラ植栽工事と外構の芝張りは〈大林環境技術研究所〉が担当、土壌は〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉(2016年)などの藤森建築で採用されている「Eソイル」。国産ヒノキ・スギ樹⽪を加⼯した人工土壌だ。