パンデミックを経た今、リアルとバーチャルの境界を超えて。『第25回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』を詳細レポート!
高い芸術性と創造性を持つメディア芸術作品を顕彰し、アートの向上と発展に力を注いできた『文化庁メディア芸術祭』。第25回も、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門ごとに各賞を選出。現在開催中の受賞作品展では、今と未来を感じさせる多様な作品群が、〈日本科学未来館〉などで一堂に展示されている。
メディアアートとひと口に言っても、その表現方法はさまざま。中でも強く印象に残ったのは、リアルの展覧会だからこそ体感できるインタラクティブなアートや、現代の社会や状況が色濃く映し出された作品たちだ。部門ごとに、その注目作を見ていこう。
【アート部門】
インタラクティブアートやメディアパフォーマンス、映像作品、グラフィックなど幅広い表現を網羅するアート部門。昨今はコロナ禍を反映した作品も多く見られるが、本展には新たな生活様式が日常となった今だからこその、次なる問題提起や希望が垣間見える作品が集まった。
優秀賞に選ばれた《Augmented Shadow – Inside》は、韓国のムン・ジュンヨンによるインタラクティブアート。白い床に白い壁、白いオブジェクトで作られた空間が作品の舞台だ。鑑賞者が照明デバイスを持って壁に光を当てると、人や動物の影が現れ、窓の外には仮想世界の人々が映し出される。
ムン曰く、「意図したのは、仮想現実の影の人と現実世界の観客が、このステージで互いに見つめ合っていること」。バーチャルとリアルの人々がアイコンタクトを取り、ともに物語を紡ぎ出すーそんな映像の未来を感じさせる作品だ。
同じくアート部門の優秀賞に選出された、山内祥太の《あつまるな!やまひょうと森》は現代を強く反映した作品。『あつまれ どうぶつの森』を模した画面で、体験者はキャラクターにさまざまな指示を与えられる。一見すると一般的なゲームを操作しているようだが、実はゲーム画面は現実世界と連動しており、操っているのは展示空間にいる人間なのだ。