身近な女性の死から自己の表現に向き合う 石内都×頭山ゆう紀の対談から見えたもの
同展は石内が次世代の作家として頭山を選んだ対話的な2人展。石内は波乱の人生を歩んだ「母」を1人の女性としてとらえ、身につけていた衣類や使いかけの口紅、髪の毛のついた櫛といった遺品を撮影したシリーズ「Mother’s」を、頭山は2006年の「ひとつぼ展」に入選し、石内からも高い評価を受けた原点といえるシリーズ「境界線13」から家族がいる風景写真と、コロナ禍に亡くした祖母の介護中に風景や庭を撮影した作品をそれぞれ展示している。
展示会場となった老舗の帯匠「誉田屋源兵衛 竹院の間」には、世代を超えた2人の作家の視線が交錯するよう、写真に写真が重なるように作品が展示されている。「KYOTOGRAPHIE」開催初日に行われた2人の対談「石内都と頭山ゆう紀の視点」では、モデレーターに赤々舎代表でディレクターの姫野希美を迎え、展示写真についてと同展の構成から、身近な女性の死に直面し、ごく私的な写真が作品になるまでの境界についてのトークが交わされた。
石内都
1979年に「Apartment」で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。2005年、母親の遺品を撮影した「Mother’s」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出される。2007年より現在まで続けられる被爆者の遺品を撮影した「ひろしま」も国際的に評価されている。2013年紫綬褒章受章。2014年には「写真界のノーベル賞」と呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞を受賞。近年の主な展覧会・出版物に、個展「Postwar Shadows」(J・ポール・ゲッティ美術館 ロサンゼルス 2015)、写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店 2016)、個展「肌理と写真」(横浜美術館 2017)、個展「石内 都」(Each Modern 2022 台湾)、個展「Ishiuchi Miyako」(Stills 2022 エディンバラ)、「六本木クロッシング」(森美術館 2022)等がある。作品は、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、ニューヨーク近代美術館、J・ポール・ゲッティ美術館、テート・モダン等に収蔵されている。