男女の埴輪1体ずつ出土 茨城・東海村・願船寺周辺「戸ノ内古墳」
埴輪には人や家、動物をかたどった「形象埴輪」と筒形をした「円筒埴輪」がある。村教委によると、20年に願船寺周辺で行われた下水道工事の際、周溝内から精巧な作りの、形象埴輪の一つである人物埴輪2体や、円筒埴輪が多数発見されたことから戸ノ内古墳の存在が初めて明らかとなった。
令和3年には、村教委が同寺の進入路工事に先立って実施した戸ノ内古墳の確認調査で、古墳の周溝内からほぼ完品の家形埴輪1点と人物埴輪4体(男子2、女子1、性別不明1)のほか、馬形埴輪や円筒埴輪の破片など多数の埴輪が見つかった。
2度の調査で多くの埴輪が発見される一方、戸ノ内古墳の墳形や規模、埴輪が古墳のどこに配置されたのかなどが不明だったこともあり、村教委は先月半ばから今月初めにかけて3回目の調査を実施。その結果、2月22日に男女の人物埴輪2体が約1メートルの地中から出土したという。
2体は、「振り分け髪の男子埴輪(仮称)」(高さ39センチ、幅24センチ)と「両腕を挙げる女子埴輪(仮称)」(頭部と胴部を接合した高さ42センチ、幅25センチ)。いずれも精巧な作りが特徴的で、目の周辺やほほ、あごなどが赤く塗られ、祭礼のときに行う化粧を表現した可能性がある。男子埴輪は上半身のみで、腕はなく、目、鼻、口がくっきりと表現されている。女子埴輪は胸に乳房があったと推測される跡がある。
村教委は「過去の調査で出土した古墳の人物埴輪と比較し、顔や装飾品の表現、胎土などに共通点が見受けられる。特筆すべき成果だ」と説明する。
村教委生涯学習課の中泉雄太学芸員は「多種多様な個体が配置された形象埴輪は、古墳に眠る被葬者が執り行った何らかの儀礼の一場面を表現している可能性がある。発見された埴輪はその内容に迫る重要な資料だが、戸ノ内古墳の墳形や規模などはまだ不明。今後も全容解明に向け調査を進めていきたい」と話す。
願船寺の藤井学昭住職は「東海村は県内でも埴輪の出土例が多く、今後も出土が続くはず。子供たちが古墳や歴史を知る上で埴輪が人類の共有財産だと知ってもらえたら」としている。