Penが厳選!座れる「名作椅子」のある空間
倉俣史朗の代表作のひとつであり、堅牢さと軽やかさを併せもつ「ハウ ハイ ザ ムーン」。めったにお目にかかれないこの椅子に座ることができるのが、「創造の体感」をコンセプトとする美術館、アーティゾン美術館の6階展示室ロビーだ。すべてエキスパンドメタルでつくられた椅子のディテールを間近に見れば、その卓越した技術力にも驚くはず。同フロアにひとりがけのソファと長椅子もあり、どちらも倉俣の作品だ。
デザイナーでありアーティストでもあるハリー・ベルトイアは、1952年にワイヤーを用いた家具コレクションを発表。その代表作でもあるこの椅子は、谷口吉郎が69年に設計した東京国立近代美術館の「眺めのよい部屋」にあり、鮮やかな絨毯の空間で静かに輝きを放つ。2012年の展示室リニューアルの際に、空間との調和を考えてクッションをグレーに変更。表面塗装も剥がして新たにクロムメッキを施し、生まれ変わった。
フランク・ロイド・ライト設計の自由学園明日館にある「六角椅子」と「食堂椅子」。「六角椅子」は旧帝国ホテルにあった「ピーコックチェア」に似ていることもあり、ライトがデザインしたと思われがちだが、実は作者不明。「食堂椅子」は明日館の設計に携わったライトの弟子・遠藤新が女学生たちに依頼され1922年にデザインした。どちらも六角形をモチーフとし、学生向けに少し小さめにつくられているのが可愛らしい。
大きな吹き抜けが心地よい黒川紀章設計の国立新美術館。ロビーにあるハンス・J・ウェグナーの「CH25」は、1949年にYチェアとともに生まれたCH27を進化させたもので、翌50年に誕生。いまでは椅子に馴染みの深いペーパーコードだが、当時は一般的な素材ではなかった。戦渦の物資不足の中で使われていたペーパーコードをこの椅子に用いて安定性と耐久性を示し、その後多くの椅子に使用されるようになった。