『研修生の応募者ゼロ』伝統芸能「文楽」が直面する後継者不足 前年度に入った研修生も同期おらず『寂しい。体験だけでも来ていただけたら』
大化の改新を題材にした大作「妹背山婦女庭訓」を4月30日まで上演している文楽劇場。そんな文楽劇場の中で行われているのが…。
(MBS大吉洋平アナウンサー)
「いままさにこの奥の部屋で研修が行われているということで、特別に許可をいただいて入らせていただきます。…あちらですね、人形遣いの研修が行われています」
講師の動きに必死についていく第31期研修生の古谷諒さん(23)。去年4月から文楽の研修を受けています。古谷さんを指導するのは人形遣いの吉田簑二郎さん。
(大吉アナ)「いまはどういった研修を行っている最中なのですか?」
(吉田さん)「人形は3人で遣うのですが、足から修行を始めるものですから、研修の期間は足の基本を一から」
(大吉アナ)「汗びっしょりですね?」
(古谷さん)「びっしょりです」
(大吉アナ)「研修を受けてどのくらいの時期がたちましたか?」
(古谷さん)「だいたい1年ちょいたったころです」
(大吉アナ)「最近の調子はどうですか?」
(古谷さん)「楽しいです」
2008年にユネスコの無形文化遺産にも登録された「人形浄瑠璃文楽」。舞台上で描かれるのは、いつの時代も変わらない“人間の情け”。それを語り手の太夫・三味線弾き・人形遣いの三者で表現します。
一方で、文楽といえば…。
(大阪市 橋下徹市長※当時 2011年)
「文楽は伝統文化として大切にしなければいけない文化だと思っていますけど…」
2011年、大阪市長に就任した橋下徹氏と文楽協会の補助金をめぐる“バトル”。“雪解け”のため橋下氏は文楽を鑑賞したのですが、まさかの“ダメ出し”。
(大阪市 橋下徹市長※当時 2012年)
「人形の動きの横に人間の顔がぼこっと入っているというのがどうも腑に落ちない。人間が見えなくていいと僕は思うんですけれども」
あれから8年。いま、直面しているのが「後継者不足」の問題です。文楽では後継者を育てるために研修生を募集していますが、今年度は初めて応募者がゼロになってしまいました。研修では太夫・三味線弾き・人形遣いを一通り体験します。
(太夫 豊竹呂勢太夫さん)
「(Q太夫になる条件はある?)ほとんどの人が太夫の声を修行で作っていくもの。こういう声の状態じゃないとできないということがない。自分の持っているいいところを発揮して演奏できるんですよ。だから本当にそういう意味ではめちゃくちゃ魅力的な仕事だと思いますよ」
昨年度から研修を受けている古谷さん。同期は1人もいません。研修の日々は充実していますが、心が折れそうになることもあるといいます。
(古谷諒さん)
「仲間がいないというのはすごく苦しいというか寂しい感じがあって。人(同期)から見てアドバイスをもらうことがないので。(Q若い世代に呼びかけたいことは?)ちょっとでもやってみたいと思ったら体験だけでも来ていただけたらうれしいと思います」
第32期の研修生の募集は4月28日まで延長され、個別相談も受付中だということです。
【文楽研修生】
・研修期間:2年間
・研修時間:基本は月~金(午前10時~午後6時)
・研修内容:義太夫、三味線、人形実技、狂言、日本舞踊、作法 など
・受講料:無料
・宿舎:遠隔地居住の場合は宿舎有料貸与制度や住宅費補助金制度あり
(2023年4月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)