〈旧岩崎邸庭園〉で、舘鼻則孝のディレクションによる江戸の技と現代アートが出合う。
2016年から始まった「江戸東京きらりプロジェクト」は”Old Meets New\
今回のオンライン展示の撮影場所は都内の中心部とは思えないゆったりとした庭のある〈旧岩崎邸庭園〉だ。岩崎彌太郎の長男で三菱第三代社長となった久彌の本邸で、迎賓館として使われた洋館と私邸だった和館が接続しているという少し変わった建物になっている。別棟として、当時、紳士のたしなみとされたビリヤードを楽しむ撞球室がある。洋館と撞球室は、明治時代、イギリスから招聘されたジョサイア・コンドルの設計によるもの。英国ジャコビアン様式を基調にした洋館と、スイスの山小屋ふうの撞球室との対比も面白い。
オンライン展示ではこの洋館と和館、撞球室に作品が並ぶ様子を舘鼻の解説とともに楽しめる。今回のコラボレーション相手は8つの事業者。乾くと玉虫色に発色する紅「小町紅」を作っている「伊勢半本店」、浮世絵の伝統を守る江戸木版画「高橋工房」、江戸切子の「華硝」、江戸木目込人形「松崎人形」などとのコラボレーションが《ヒールレスシューズ》や太鼓などの作品となった。
昨年、今年と2回の「江戸東京リシンク展」を開催した舘鼻は言う。
「伝統というと地方のイメージがあると思いますが、東京にも歴史ある匠の技が息づいていることに改めて気づきました」
江戸時代の花魁のファッションを参照することでも知られる舘鼻。江戸時代からの技を守る事業者の職人たち。東京の地に受け継がれた技を通じて、お互いが伝統の新しい顔を見つけている。
作品の展示はオンラインのみだが〈旧岩崎邸庭園〉はいつもどおり入場が可能、建物と庭を見学できる。オンライン展示されている作品の中には洋館の壁紙を引用したものもある。工芸とアートと建築のコラボレーションも楽しめる企画だ。