対局の邪魔か味方か、頭の中で流れる音楽[山口恵梨子の将棋がちょっと面白くなる話]
さて、今回のコラムのテーマは「音楽」にしようと思います。
「NO MUSIC,NO LIFE.」という言葉もあるように、音楽を日常的に聴いている人はとても多いと思います。将棋界ではどうかというと、実は「意識して音楽を聴かないようにしている派」が存在するようです。
えっ、音楽を意識して聴かない人なんているの?と思うかもしれません。ただ、これには理由がございます。そう、対局中に次の一手を考えていると頭の中で流れてくるんです。音楽が。
私の場合はアマ初段の頃くらいからでしょうか。対局で優位に立ったときは、「アルプスの少女ハイジ」の主題歌やベートーベンの「第九」がガンガンに頭の中を流れていました。別に意識してその曲を選んでいたわけじゃないんですよ。なのに、突如として、流れ始める(笑)。両方ともテンションが上がる感じの曲だし、攻め将棋になったのは、もしや頭の中の音楽の影響じゃないかと思うぐらいです。
小学生から通っていた府中の支部道場で対局中にテレビがついていた影響か、形勢不明な中盤戦では、CMソングが頭の中を駆け巡っていることも多かったかな。トップスリーをあげると、キユーピーのCMの「たらこ・たらこ・たらこ」、ブルーベリーアイのCMソング(ブルブルブルブルアイアイ!ってやつです)、ゲーム「ピクミン」のCMソング「愛のうた」でした。若い後輩たちには、何のこっちゃ、と思われそうですが、同世代の方々は、あの音楽の中毒性が伝わるかなと思います。
ただ、不思議なことに、私の場合、敗勢になったら、音楽が何も流れなくなるんですよね。特に序中盤で失敗したときは、頭の中が無音になり、「このまま負けると相手に申し訳ないし、恥ずかしすぎる」という言葉が頭の中でぐるぐるまわり、無我夢中で必死に指していました。昔から序中盤でいきなり追い込まれて、終盤で何とか逆転勝ちするパターンが多いことを考えると、本当に集中しているときって、無音になっているときなのかもしれないですね……。