建築界をリードしてきたノーマン・フォスターの大回顧展、パリ〈ポンピドゥー・センター〉で開催中。
フォスターとロジャースがそれぞれのパートナーと〈チーム4〉を結成したのは1963年のこと(1967年に解散)。それからちょうど60年、盟友が設計した美術館の2200平方メートルを使った大回顧展は、副館長のフレデリック・ミゲルーのキュレーションで実現している。
高層ビル、空港、橋など、巨大なプロジェクトの印象が強いフォスターだが、展覧会は手描きのスケッチの展示から始まる。学生時代のものから最新のものまで、デザインやアイディアを描き綴ったドローイングやスケッチ帳のページが展示室を埋め尽くす。世界各地でフォスターが撮影した写真も絵葉書のようにずらりと並び、彼の創作の原点が見えてくる。
「建築もデザインも、全て紙の上から始まるものです。そして旅をすることを通してさまざまな発見や発想を得てきました」
時には懐かしそうに振り返りながら、会場を案内してくれたフォスターはまもなく88歳。この展覧会は60年以上に渡る建築人生を振り返りながら、メンターやコラボレーター、そしてのべ1万人にも及ぶスタッフへのトリビュートという意味合いもある。「自然と都市化」「スキン&ボーン」「バーティカル・シティ」「歴史と伝統」「プランニング&プレース」「ネットワークとモビリティ」「未来と展望」という8つのテーマに沿っての展示となる。
スケッチの展示に続くのが「自然と都市化」 がテーマの展示になる。フォスターはメンターであり、のちにコラボレーターとなったバックミンスター・フラー(1895-1983) の影響を何度も口にする。「宇宙船地球号」を提唱し、時代に先駆けサステナビリティやエコロジーを訴えたフラーだが、フォスターの建築の源泉には、そのフラーの思想が深く根を張っている。