「祭りは心の支え」3年ぶりの日田祇園 人形師が師匠の亡き母へ送る“特別な人形”【大分発】
300年の伝統を誇る日田祇園。日田の夏の風物詩だ。疫病や風水害を払い、安らかな日常を祈願するお祭りだが、その”疫病”のせいで2年間開催することができなかった。
山鉾の人形を作る、日田で唯一の人形師・長嶋静雄さん。「ヤマ(山鉾)を引く人たちも作っていく方も、寂しい限り。もう3年間待ってるから、気が抜けたみたいですね」と話す。
長嶋さんは祖父、父のあとを継ぐ3代目として24歳から人形作りに携わり、もう40年を超えた。
人形師 長嶋静雄さん:
「ヤマがきた!ヤマがきた!」ちゅうて、山の方をパッと見たときに、表情が笑顔に変わる。やっぱ、喜びっちゅうかですね。それが一番の喜びですね
作る人形は、歌舞伎や謡曲からヒントを得て長嶋さんが1人で考える。新型コロナウィルスや水害に「打ち勝つ」願いを込めて、力強い場面を探す。
長嶋さんには今年、特別な思いのある人形がある。それが「義経千本桜」だ。
人形師 長嶋静雄さん:
昭和29年、母が一番最初に義経千本桜の道行を作ったっち、ずっと言ったもんですからね。だから今回は感謝を込めて、こちらの「義経千本桜 道行」を作りました
2020年3月、92歳で亡くなった母・タネヨさん。タネヨさんも人形を作っていて、長嶋さんにとって師匠でもあったタネヨさんが最初に作ったのが、「義経千本桜」の「道行」だった。
人形師 長嶋静雄さん:
祇園好きな母ですね、裁縫の上手な。よく習いました、裁縫のことは。亡くなって、できるかな?と心配しよったと思うんですよ。人形作りが1人いなくなったから。だからもう、そんなことはねぇ、できたバイ!って思ってから報告ですね
そして迎えた3年ぶりの祇園。今までよりも規模は小さめだが、日田祇園は長嶋さんにとって、そして日田の人たちにとって心の支えだ。
人形師 長嶋静雄さん:
暑い盛りに、なんがおもしろいかと言うかもれませんけど、これで1番のパワーをもらって、また明日からの仕事に臨む。みんなそういった感じと思いますけどね
(テレビ大分)