音楽家、江﨑文武 iPadで「触れる・創る音楽体験」を子どもたちに
2022年にForbes JAPAN「30 UNDER 30 JAPAN」の受賞者の1人にも選ばれた江﨑氏が、去る5月の週末に東京渋谷区の文化施設・代官山ティーンズ・クリエイティブで、6歳の児童から24歳の大学院生まで幅広い世代を集めて音楽創作のアートスクールを開催した。iPadを媒介として「音を集め、音に触れる体験」を通じて「音楽をつくり、楽しむことの喜び」を江﨑氏は生徒たちに伝えた。
■音に触れながら音楽をつくるアートスクール
マザーディクショナリーが運営する代官山ティーンズ・クリエイティブは、渋谷区に在住、または在学する小学生から18歳以下の高校生までの世代に開かれた施設だ。この場所では江﨑氏のようなプロフェッショナルとして活躍するたくさんのアーティストや、施設のスタッフによるさまざまな内容・形式のワークショップが実施されている。
江﨑氏が講師を務めたアートスクールのタイトルは「“5月20日の音楽”をつくろう」集まった生徒全員にiPadが手渡され、App Storeで配信されているKoala Samplerアプリを使って「音によるスケッチ」を思い思いに楽しむことがこの日の課題とされた。
Koala Samplerはさまざまな音をコラージュしながら、オリジナルの音楽が創れるサンプリングアプリだ。音源はiPadのマイクで録ったり、iPhoneで撮った音や動画のファイルから取り込むこともできる。iPadのタッチスクリーンを活かして、まるで粘土細工のように「音に触れながら、音楽をつくる体験」が楽しめるところも、このアプリの特徴だ。生徒たちは与えられた時間内に施設の中を駆け巡りながら、感性の赴くままにさまざまな音を探しまわった。
目指す音楽のイメージを膨らませながら1人で集中する生徒や、初対面の仲間どうしでアイデアを交換したり、思い思いのスタイルで創作に向き合う生徒たちの背中を江﨑氏の温かいまなざしが見つめる。ふだん演奏家として音楽に向き合う時とはまた違う、柔らかな表情を浮かべながら生徒たちと相対する江﨑氏の様子がとても印象的だった。
授業の締めくくりとして、参加者全員が創った音楽、集めた音をお披露目する機会が設けられた。最年少となる6歳の生徒が思いも寄らないほどにアグレッシブで完成度の高い楽曲を仕上げてみせたり、作品発表の時間には驚きの声と、達成感に満ちた生徒たちの笑顔があふれた。