「ジューパニーズ(ユダヤ日系人)」と呼ばれる人々を知っていますか?
「アーバン・ディクショナリー」(英語の俗語や慣用句のオンライン辞書)は「ジューパニーズ」を、「日本人とユダヤ人の血が混じった人」と定義し、「(世界に)おそらく7人くらいいる」としている。タナカの意見は違う。
「7人よりはるかに多いです。すでに数百人は知っていますし、その数は日ごとに増えています」
そうした推定を出すのにタナカより相応しい人など、世界のどこを探しても見当たらないだろう。ここ数ヵ月、タナカはほかのことをすべて脇に置き、世界初かもしれないユダヤ日系人の口述歴史プロジェクトに専念してきた。
このプロジェクトは、タナカが(少なくとも目下は)完全にひとりで取り組んでいるもので、米国最大のユダヤ人団体「名誉毀損防止同盟(ADL)」から特別助成による資金援助を受けている。タナカは冗談半分に言う。
「結局のところ、これはほかのユダヤ日系人たちが私並みに混乱しているかどうか、自分が知りたいがための一手段なんです」
ニューヨーク、トロント、ロサンゼルス、シアトル、ポートランドなど北米中の都市で、すでに50人に取材したという。なかでもサンフランシスコのベイエリアは、「ユダヤ日系人の中心地」だとタナカは表現する。
タナカが取材した人たちのなかには、世界初のユダヤ日系人の子孫らもいる。このユダヤ日系人の出自は知られている。すでに亡くなっているこの女性は、100年ほど前、コンスタンティノープル(当時はイスタンブール)で結婚したロシア系ユダヤ人のシガレットガールと日本人外交官のあいだに生まれた。
妊娠が発覚すると、女性の母はきょうだいが住んでいたニューヨークへ飛び、そこで出産したという。