彫刻のような絵画。画家・水戸部七絵の規格外の“絵日記”。
これまで人種やジェンダー、個人のコンプレックスなどが顕在化するものとして、主に「顔」をテーマに創作を展開してきた水戸部。だが、〈東京オペラシティ アートギャラリー〉で開かれている個展で見せるのは、より社会というものへ関心を広げた彼女の新しい試みとも言える作品だ。中心となるのは、コロナ禍以降に手がけたという〈Picture Diary〉シリーズ。水戸部が心を揺さぶられた世界で起こっているニュースを題材に、文字通り“絵日記”のように、絵や文字を記した作品群である。
例えば、東京オリンピック・パラリンピック、バンクシーやバスキアなどアートに関するニュース、〈大英博物館〉における黒人奴隷に関与した人物の胸像撤去問題、ブラジルでナショナルチームのサッカー選手に対する男女間の給料格差がなくなったこと、SNSで世界中にシェアされた、タリバンの復権に対するアフガニスタン少女の悲劇的な動画...。ジェンダーや人種問題、アートの価値、政治や資本主義にまつわるトピックが、水戸部が感じたままに、ストレートに作品に映し出される。