「編入試験」で正念場、里見女流五冠が第2局で反転攻勢に出るには
編入試験では、棋士歴が浅い「新四段」5人が試験官として立ちはだかる。初戦の徳田四段は、5人の中で圧倒的な好成績を収める難敵だった。今年4月のデビュー以降、勝率は全棋士中1位の9割2分3厘(編入試験第1局時点)。第1局では、後手番の里見女流五冠が得意の中飛車から積極的に指し、中盤まで形勢は互角だったが、以降はリードを許す展開になった。
新四段は、棋士養成機関・奨励会の最終関門「三段リーグ」を突破したばかりで勢いがあり、最先端の研究にも通じている。五番のうち三つ勝つのは容易でない。里見女流五冠は受験資格の獲得(5月27日)から約1か月の熟慮の末、受験を決意した。
受験を表明した7月の記者会見では、「ただ強い方と対局したいという気持ちがある。棋士になれるかどうかより、自分がどこまでやれるのかを重視して決めた」と明かした。
実は、里見女流五冠は、試験官5人全員と過去に対局経験がある。初段として在籍した2013年5月の奨励会で、当時2級の徳田四段と香落ちで戦い、負けた。里見女流五冠は記者会見で、5人について「それぞれの個性があって、全く違う将棋を指す。一局一局対策を練らないといけない」と話した。先手番で主導権を握れる第2局に向けて、研究を重ねてくるだろう。
第2局の試験官、岡部四段とは、17年5月の奨励会三段リーグで指し、敗れているが、5年以上が経過している。岡部四段は相掛かりで序盤を強みにする居飛車党。編入試験ではどんな戦いが予想されるのか。
「里見さんは高い勝率を上げている中飛車、最新型に精通している岡部さんは流行を取り入れた居飛車という戦いになるのでは」と予想するのは、20年に編入試験に合格した折田翔吾四段(32)。「先後が決まっているので、準備が占めるウェートが大きい」と語る。
折田四段が編入試験を受けた際は、白星発進したものの第2局で敗れ、その後に連勝してプロ入りを決めた。初戦で敗れた悪い流れを断ち切れるのかが問われる次局。
編入試験はスローペースで進むので、一つ敗れた後、挽回の機会がすぐには来ない。折田四段は「気持ちの切り替えが大変だが、女流棋戦などで数多くの大勝負を指している里見さんの経験値が強みになるはずだ」と見ている。