エルメス初の絵本を手がけた、100%ORANGEにインタビュー。
クラフトマンシップを大切にするメゾンとして、手でものをつくる楽しさや純粋な喜びを子どもたちに伝えたい――そんな強い思いから、エルメスの日本サイドより絵本を発案。パリ本社の賛同を得て実現することに。このワクワクするようなプロジェクトの作り手として白羽の矢が立ったのが100%ORANGEでした。
――最初にオファーされた時、どう感じましたか?
エルメスという名前はもちろん知っていましたが、オファーをいただいたことに驚きましたし、製品のことはほとんど知らなかったので果たして絵本が作れるかな? と心配になりました。でも「クラフトマンシップをテーマとした絵本を作りたい」というお話だったので、そう考えると自分もイラストレーターという職人みたいなものだから、近い気持ちで書けるかなと思い直しました。エルメスさんとやりとりするうちに、これは企業の紹介などではなく、もっと大切なことを子どもたちに伝え、何十年経っても読み継がれるような絵本を本気で作ろうとしている気持ちが伝わってきて、引き受けることにました。
――具体的には、どのように物語を考えたのですか?
職人のおじさんを主人公にしようと、ぱっと思いつきました。エルメスはユーモアを大事にするメゾンだということを知り、おじさんもユーモアのあるほうがいいなと思いました。と言っても、おじさんは寡黙で、動物たちのリクエストに応じて手を動かし、素敵なものを作り出すだけ。その黙々と仕事をする姿におかしみがにじみ出るようにしたいと思いました。
あとから知ったことですが、エルメスの5代目の故ジャン=ルイ・デュマさんという方は、飛行機の中で新しいカバンを考案したり、いつも手帳を持ち歩いて、アイデアや落書きのような絵をひょろひょろっと描いたり、ユニークな方だったそうで、途中からそのイメージが「おじさん」の中に入り込んできました。