『アングル:外交ボイコットに日本は苦慮、米中のバランス模索』への皆さんの反応まとめ
[東京 10日 ロイター] - 西側諸国で表明が相次ぐ北京冬季五輪への外交ボイコットに対し、日本政府や与党内からはいかに米中両国へのバランスを取るか苦慮する声が聞かれる。自民党の対中強硬派は同調を呼び掛けているが、政府・与党内には人権問題を批判しつつもボイコットとは取られない形を探る動きもみられる。
岸田文雄首相は10日の参議院本会議代表質問で、「適切な時期に、五輪・パラリンピックの趣旨、精神や外交上の観点など諸般の事情を総合的に勘案し、自ら判断したい」と述べた。米バイデン政権が6日に外交的ボイコットを発表して以降、岸田政権は一貫して同じメッセージを発し続けてきた。
同盟国である米国との関係は最重要で、人権問題も深刻に捉えるべきだが、経済的な結びつきが強い隣国・中国とも上手に付き合う必要があり、その両国関係の行方が読みにくいためだと、政府関係者の1人は解説する。「米中が接近ムードになったかと思えば政治的ボイコットが打ち出され、対応が難しい」と、同関係者は言う。
政府・与党内にはさまざまな案が飛び交っている。ある与党議員は「7月の東京五輪開会式に中国が派遣したのが苟仲文(こう・ちゅうぶん)国家体育総局長なので、日本もスポーツ庁の室伏広治長官を派遣すれば最低限の礼儀にはなる」と話す。室伏氏は閣僚ではないため、米国などと一定程度足並みをそろえられるとの見立てだ。
別の与党関係者は「東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長などを務めた人が訪問する公算が大きい」と述べ、森喜朗元首相(訂正)や橋本聖子参院議員の名前を挙げる。2030年の冬季五輪を札幌に誘致する活動の一環とすることができるとみている。 橋本氏は北京で開催される国際オリンピック協会(IOC)総会に出席する見通し。
外交ボイコットはこれまでにオーストラリア、英国、カナダも新彊ウイグル自治区などでの人権問題を理由に表明しおり、その中で自民党内の対中強硬派は日本も加わるべきと声を強めている。佐藤正久外交部会長は6日、「人権と主権を考えたときに首脳や閣僚が参加するのは良いメッセージにならない」と発言。党の保守系議員連盟「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」の青山繁晴参院議員らは7日に岸田首相と面会し、外交的ボイコットを迫った。 高市早苗政調会長も8日、「賛同する。しっかりとした姿勢を日本としていち早く打ち出していくべきだ」と述べた。
一方、フランスは外交ボイコットをしない見通しで、ブランケール教育相は9日、追随することはないが、中国におけるいかなる人権侵害も非難されなければならないと述べた。「スポーツはそれ自体が一つの世界であり、政治的な干渉から守られなければならない」とし、マラシネアヌ・スポーツ相が北京五輪に出席すると明らかにした。
首相に近い日本の政府関係者は「英米のボイコットに追従する必要はないが、日本側が高位の閣僚を送れば中国に対して(岸田政権は中国寄りとの)誤ったメッセージを与えてもいけない」と語る。「急いで決める必要はない。最後は首相判断だ」と話す。
(竹本能文 編集:久保信博)