多様な「コラージュ」で空間を満たす金氏徹平のアート|青野尚子の今週末見るべきアート
今年で活動開始から20周年を迎える金氏徹平。さまざまなものを既存の文脈から切り離し、組み立てる「コラージュ」的な手法による作品を発表してきた。〈市原湖畔美術館〉での個展「金氏徹平 (Something Falling/Floating)」では新作・旧作含めて100点近い作品を展示。「彫刻」という原点に立ち返るかのような構成だ。
近年の金氏は舞台や小説など異ジャンルとのコラボレーションに積極的に取り組んできた。芸術祭への参加も多い。今回の個展では一転して、ひとりで彫刻と向き合うことになる。
「これまでの作品や人やもの、場所、時代といったものも含めてコラージュ的な手法で再解釈しています。わかりづらい、不安定なものをどう受け入れるか、いろんなものをどう受け止め、接続させるのか。それが僕の作品かな、と思う」と金氏はいう。
金氏の作品は原色のオブジェを組み合わせたカラフルな印象が強い。が、今回展示されている作品の多くはグレーを基調とした、モノクロームな色合いだ。これは会場の〈市原湖畔美術館〉のコンクリートの建物や、周囲の石などからインスピレーションを得たもの。「これまでのカラフルな作品の色が混ざり合ってグレーになったとも言える」と金氏がいうように、これもまたコラージュの一形態だ。
照明がさまざまな色に変わっていくのも今回の個展の特徴だ。通常の美術展のように真っ白い空間だったかと思うと全体が赤や緑に変わったり、さまざまな色のスポットライトがそれぞれの作品を照らし出す。この照明は近年、舞台で金氏とコラボレーションしている照明家・髙田政義によるものだそう。
「白一色の状態も、さまざまに変化する状況のひとつと考えることができます。壁に映る観客の影が動いていくことも想定に入れています。そうやって変化すること、常に揺れ動いて見えることの方がリアルなのでは」