名建築を食べる!? 〈おおいた建築クッキー〉がかわいすぎる!
縦11×横×高さ5cmの白い缶に、よく見知った3つの建築が生き生きとした線で描かれている。〈おおいた建築クッキー〉と書かれたピンク色のシールを眺めつつ手に取ると、思った以上に、ずしりと重い。
缶の中に入っているのは、12種類の手作りクッキー。蓋を開けると、藤森照信が手がけた〈ラムネ温泉館〉、坂 茂設計の〈大分県立美術館(OPAM)〉、そして大分市出身の磯崎新が設計を担当し、2022年10月、国の登録有形文化財に登録された〈アートプラザ〉をかたどった3枚が目に飛び込んでくる。
一体全体、こんな建築萌えの一品を作ったのは誰なのか? それは、別府市で障がい者の就労支援や生活介護を行う社会福祉法人〈べっぷ優ゆう〉。20年前の設立以来、20人ほどの仲間(〈べっぷ優ゆう〉では親しみをもって利用者をこう呼んでいる)が日々おいしいクッキーを焼いている。
開発のきっかけは、2019年に始まった大分県文化観光推進事業だった。その一環として、温泉だけではない大分の文化を発信する“新しいお土産”を作ろうと、県が別府のアートNPO〈BEPPU PROJECT〉にコーディネートを依頼。県の財産でもある建築をモチーフに、当時、人気になっていた“缶クッキー”を作るべく、味に定評のあった〈べっぷ優ゆう〉に白羽の矢が立ったという。
もともと〈べっぷ優ゆう〉では、商品デザインにも力を入れていたこと、それまでに〈ビームス〉とコラボした米粉クッキーを手がけるなど開発力があったことも後押しした。
企画とデザインについては、〈BEPPU PROJECT〉がバックアップ。イラストは、日出町に拠点を置くデザイナー、〈Kame Graphics〉の安部芽衣が手がけた。大分に数ある名建築の中から、前述の3つが選ばれたのは「(クッキーの抜き型の元となる)図案にしやすいことが理由だった」と、〈べっぷ優ゆう〉の管理者である永松温子さんは話す。