『バーフバリ』のラージャマウリ監督インタビュー! 最新作『RRR』を語る
--『バーフバリ』の世界的なヒットがあり、次作としてインドの歴史を描いたこの作品を世に放つということで、監督にもいろんな想いがあったと思います。『RRR』の構想はいつ頃から考えてらっしゃいましたか?
構想自体はある意味、少年時代からあったと言えばありました。ですが、実在する独立運動の闘士を題材にしようという具体的なアイデアは『バーフバリ 王の凱旋』の公開からおそらく6、7か月くらい後に思いついたものです。
私は子どもの頃から2人のヒーローが出会うというストーリーが非常に好きで、まったく異なる背景を持つ2人が出会い、彼らにいろいろなことが起こるという物語はとてもエキサイティングだなと考えていました。
そしてこの映画の題材の元となる歴史上の人物はインド独立運動に身を投じた闘士なのですが、本当に偶然ではありますが、この2人は同じ頃に生まれています。さらにこの2人が20代の頃、2人とも3年ぐらい行動が不明な時期があるんですね。
それから2人はまたそれぞれの場所に戻っていき、抑圧を受けている民衆に対して「武器を持って戦いに身を投じよ」と言って独立運動をリードしていくのですが、この2人は戦術というか、非常に似た部分があるんですよ。なので、もしこの2人が20代のその時期にどこかで会っていたとしたら? という物語をフィクションとして考えてみました。そしてその2人をスーパースターに演じてもらったらどんな作品になるだろうというのを、映画の題材としてあたためていました。
さらに言うと、映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』で、南米を旅する青年が最後にはチェ・ゲバラになっていくというアイデアがとても好きで、この作品が私の頭のどこかにあったのだと思います。
--『RRR』の主人公、ラーマとビームにはそれぞれモデルとなる実在の人物がいるんですね。
ビームの元となっているのはコマラム・ビームという実在した人物で、この方はテランガナにおける戦いをリードする人物でした。一方のラーマはアンドラ・プラデシュ州でイギリスに抵抗して戦っていた人物で、アッルーリ・シータラーム・ラージュと言います。
ラーマが森で戦う時のオレンジの布をまとった神のようないでたちは、ラーマーヤナを想起させるという人もいますが、実際にラージュがこういったオレンジの袈裟を着て、弓を持って活動していたそうなんですよ。それがなぜなのかはちょっと不明なのですが、自分に追随する人たちをリードする立場のラージュが森の中からあの格好で出てくることで、人々を鼓舞しようとしていたのかもしれません。その点は謎として残っています。
それぞれの故郷を出たこの2人の身に一体何が起きたのか、事実となる点と点を想像の線で結ぶように考えてみると、2人は故郷に戻って独立運動に身を投じるのですが、それより前に、おたがいに影響を受ける出来事があったのではないかと思ったんですね。
コマラム・ビームが自身の地域にある水や土地は私たちに所有する権利があるのではないかという意識を持つに至ったのは、もしかしたらアッルーリ・シータラーム・ラージュの影響を受けたからではないかと。2人が独立運動をしていく中でおたがいの影響を感じる部分が多々あって、そういったところをこの映画のストーリーに盛り込みました。
--ラーマ役にラーム・チャラン、ビーム役にN・T・ラーマ・ラオ・ジュニア(NTR Jr.)を起用した理由はなんですか?
ラーム・チャランはその瞳に悲しみであったり、心の嘆きだったり、いろんな感情を込めることができる俳優です。そういうさまざまな感情の動きを瞳に投影することのできる俳優だと私は感じています。
NTR Jr.に関して言えば、彼にはとても真摯で無垢な印象を持っています。だから彼が演じるビームには、強いけれど、妹のような存在の幼い少女を思うと涙が出てきてしまうというコントラストがあります。強さとあたたかさを併せ持つ人物と言えるでしょう。この2人は炎と水であると考えていて、その要素にぴったり合う人物は、この2人以外には考えられませんでした。
--歴史上のIFを描いたこの『RRR』において、ラーマとビームという異なる背景を持つ2人が出会って、その一瞬の交差によって人生が一変するというところが印象的でした。この2人の男に監督が託したかった想いはありますか?
私は本来、自身の視点やメッセージを登場人物や映画に投影するというよりは、キャラクターの説得力を念頭に置くタイプです。ですが、ここ数年の間に起きた出来事が私を非常に悩ませています。
それは、私が住む州が2つに分裂してしまったことです。ここ数年はその状況に対する怒りがあります。同じ言語を話す者同士なのに、アンドラ・プラデシュ側か、それともテランガナ側かという対立が生まれてしまったんですね。そのことが本当に悲しくて、頭から離れませんでした。私たちは一つだよ、同じ人間だよということをどういうふうに伝えたらいいだろうかということをずっと考えていました。
そして、『RRR』の主人公2人のモデルになった闘士たちはそれぞれアンドラ・プラデシュとテランガナの出身だったけれど、おたがいに尊敬しあう友達になったよということを作品として描くことで、現実に起きている問題を全面に出さずともメッセージとして伝えたいと思いました。
--『RRR』の制作期間は世界的なパンデミックが起きたタイミングと重なっています。コロナ禍で諦めざるを得なかったこともあったと思いますが、逆に、逆転の発想で克服できたことはありますか?
このパンデミックはすべての人に影響があったと思います。『RRR』に関しても、約5割を撮り終えた後で一旦すべて中断するということになりました。1年後にまた再開したのですが、またすぐシャットダウンせざるを得なくなったり…。ですが、逆にそれが助けになりました。
撮影を中断している間にCGを使う部分をいろいろ調整することができて、ビジュアルエフェクト面ではより完成度を上げることに時間を費やすことができました。お金は失いましたが、時間を稼ぐことはできたので、ある意味トントンですね。
--例えば動物たちが総督府を襲うシーンが豪華になったりしたのでしょうか?
すべてのCGに対して手を加えたわけではありませんが、なかには撮った後で期待していたようにならなかったシーンがいくつかあって、そこは手を加えました。例えば、おっしゃったように総督府を動物たちが襲うシーンで、火のついたたいまつで虎の顔を殴るところがありましたよね。あそこの出来がいまひとつ納得できなかったのですが、撮影が延期になったおかげでCGに手を加えることができて、希望通りのシーンにすることができました。
--いろんなお話をありがとうございました。また日本でお会いできるのを楽しみにしています。
こちらこそ楽しみにしています。
『RRR』
10月21日(金)全国公開
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ 『マガディーラ 勇者転生』(09) 『バーフバリ 伝説誕生』(15) 『バーフバリ 王の凱旋』(17)
原案:V.ヴィジャエーンドラ・プラサード 音楽:M.M.キーラヴァ―二
出演:NTR Jr./ラーム・チャラン
原題:RRR/2021年/インド/テルグ語、英語ほか/シネスコ/5.1ch/日本語字幕:藤井美佳/字幕監修:山田桂子 応援:インド大使館 配給:ツイン #RRR rrr-movie.jp
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