古今東西 かしゆか商店【ビスポーク万年筆】
「ペン先は非常に硬い金属製ですが、書き癖に合わせて少しずつ研磨され、いつの間にかその人にとって使いやすい形になるんですね。とはいえ、そこまで育つには何十年もかかる。だから書き癖を検証し、最初から “その人が20年30年使い込んだ時の書き味” になるようにペン先を削るんです」
驚いたのは1本作るのに300以上も工程があること。例えばキャップをはめる胴軸のネジ部分は、伝統的な轆轤技法「四山ネジ切り」で削ります。と、一回転でネジが四山分も進む形になり、普通より少ない回転で開け閉めできる。小さな部分にも大きな手間。だから気持ちよく使えるんですね。
さて、私の書き癖を見て選んでもらったサンプルの万年筆を使ってみたところ、するするっとペン先が動き、想像以上の書きやすさ。書き終わりもぴたりと決まります。そして、定番の青インクも素敵ですが、工房ではセピア色のインクも製作。材料はなんとイカ墨!