【今月見るべきアート展】石川直樹が挑んだ6つの山の記録など
世界には標高8000mを超える山が14座ある。2022年、写真家・石川直樹は、そのうち6座の登頂に挑んだ。4月にダウラギリ(8167m)、5月にカンチェンチェンガ(8586m)、7月にK2(8611m)とブロードピーク(8051m)、8月にナンガパルパット(8126m)、そして9月にマナスル(8163m)。ナンガパルパットは雪崩のため撤退を余儀なくされたが、ほかの5つの山は登頂に成功した。
標高8000mを超える高所では、海抜0m地点と比べ空気中の酸素濃度が3分の1まで低下し、生命活動が大きく制限される。いわゆる「デスゾーン」である。死が隣り合わせにあるそういった極限の地に、1年間で6回も足を踏み入れるのは、肉体的にも容易ではない。石川曰く「いままでは8000m以上の山に登るのは、せいぜい1年に1度くらいでした。身体への負荷も大きく、費用もかさむので。ただこの2年間、パンデミックによりなかなか海外に遠征することできなかったので、その反動もあって、今年、僕も含めて多くの登山者が山へ飛び出して行きました。2022年にテント泊をした日数は結局100日くらいになったかな」
4月から9月まで連続して山に挑んだのは、他にも理由がある。「4月にダウラギリに登る前、はじめて低酸素室でトレーニングを行いました。人工的な環境で身体を低酸素状態に慣らすのでそこまで効果を期待していなかったのですが、予想以上に高所順応が進んだ。それもあって、通常だと一カ月くらいかけてゆっくりと身体を順応させながら登頂するところ、ダウラギリは10日間で登ることができました。一度順応すると、連続して登ったほうが、じつは楽なんです。僕も45歳になりましたし、さらに歳を重ねると、連続して登るような無茶な遠征は難しくなる。登れるうちにと思って、今シーズンは目いっぱい登りました」
表参道のGYRE GALLERYでは、石川が挑んだ6つの山のうち、ネパールにある3つの山(ダウラギリ、カンチェンチェンガ、マナスル)にフォーカスした個展を開催。1月13日からは、渋谷・MIYASHITA PARK内のSAI GALLERYで、パキスタンにある残りの3つの山(K2、ブロードピーク、ナンガパルパット)で撮影した写真によるエキシビションも始まる。
下記は、石川へのインタビューを抜粋・編集したものだ。