【インタビュー】国境を越えて宇宙からも見えるアートをつくる、蔡國強の個展へ。
会場に入ると展覧会タイトルにもなっている作品〈原初火球〉が出迎える。展覧会タイトルの「〈原初火球〉から始まる」との文言通り、彼の原点ともいえる作品だ。これは放射状に並べられた7枚の屛風からなるもの。7枚のうち4枚は1991年、蔡が日本にいたときに制作された。3枚は2023年に作られた新作だ。
〈原初火球〉を構成する作品は和紙やガラスの上で火薬を爆発させて描く「火薬ドローイング」という手法で描かれている。この屛風で表現されているのは「月に凹型のピラミッドを作る」「ベルリンの壁を再建しては解体して移動させる」といった、蔡が構想しているプロジェクトのスケッチだ。この壮大なプロジェクトの中には実現したものもあれば、いつか実現させるべく蔡がチャンスをうかがっているものもある。
初期から現在に至るまで、作品の要の一つとなっている火薬について蔡はこう語る。
「火薬の爆発は破壊をもたらすと同時に美を創造します。火薬を置くところは決められるけれど、爆発自体をコントロールすることはできない。爆発は人間存在の核心に触れる大いなる自由の感覚なのです」
この個展には蔡の父が描いた小さな絵も展示されている。蔡の父も画家だったが、蔡によれば「真面目すぎる」のだそう。また蔡が暮らした中国は「コントロールされた社会だった」とも振り返る。一方で、彼が育った都市、泉州は爆竹の産地でもあり、火薬は手に入れやすい素材だった。
「予測不可能で偶然に左右される火薬の振る舞いが自分を解放してくれるのです」と蔡はいう。