宝塚歌劇月組公演「応天の門」開幕 月城かなとが脂ののった演技で魅了 3月6日まで
月刊コミックバンチで連載中の灰原薬(はいばら・やく)さんの「応天の門」が原作。2017年、文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞を受けるなど、歴史サスペンスとして高い評価を得ている。
藤原良房とその養嗣子・基経(もとつね=風間柚乃=かざま・ゆの)が朝廷の権力を掌握しつつあった平安初期。京の都では、月の子(ね)の日に「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)」が現れ、その姿を見た者を殺すという怪事件が頻発していた。幼少期から秀才の誉れが高い、今でいう学生の文章生(もんじょうしょう)、道真(月城)と、当時の警察組織、検非違使(けびいし)の長で色男の在原業平(ありわらのなりひら=鳳月杏=ほうづき・あん)が、唐渡り品を扱う女店主、昭姫(しょうき=海乃美月=うみの・みつき)らの協力も得て、捜査を始める。だがその背景には、権力者たちの欲望が渦巻いていた。
才覚を持て余し、納得できないことはかたくなに拒んで、京には望むものがないが唐に行けばさらに高度な知識が得られると憧れる-。一本気な道真を、月城は単調になることなく演じる。トップとして舞台に立つ中で、表現力にさらに磨きがかかったようだ。
主要キャストも安定の演技でもり立てた。「共に生きる人の心を知ろうとすること」の大切さを説き、道真の心に変化をもたらす、海乃演じるあねご肌の昭姫が小気味いい。
道真の相棒、鳳月の業平はその立ち姿の美しさ、存在感で、登場するだけで舞台が締まる。重要な役どころとなる基経を、風間が影のある人物として堂々と演じ、成長ぶりをうかがわせた。
じっくり芝居を見せた前半からは一転、後半のショー「Deep Sea-海神たちのカルナバル-」は、映像を駆使して舞台となる海底を表現、ラテンの音楽に乗せ、熱い歌と踊りを繰り広げた。
幕が開き、照明が点くと全員が舞台上でスタンバイ。カラフルなフリルの衣装で賑やかなサンバが始まる。
歌唱力に定評がある風間の歌で、女性にふんした鳳月と月城のデュエットダンスなど、遊び心もふんだんに。終盤、黒に刺しゅうの衣装で踊る月城と海乃の豪華なデュエットダンスは、美しさにため息がこぼれた。新人公演でも活躍した礼華(れいか)はるらが踊りで引っ張る場面も多く、若手が着実に実力を付けているのが印象的だった。
月城を筆頭に、月組の充実ぶりが感じられる舞台だった。
3月6日まで。同25日~4月30日、東京宝塚劇場で。