新時代の序章となるか? 第18回『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』詳細レポート。
映像やサウンドスケープによる展示が多かったことも、今回のビエンナーレの特徴だ。抽象的なアート展のようなものから、パビリオンを改築するような具体的なアクション、パフォーマンスやイベントまで、千差万別な展示や提案が満載である。
模型などが並び「建造物を建てる」ことにフォーカスした旧来の建築展とはかなり異なる内容に、当然批判や反発の声はある。が、気候変動危機に直面するなか「新しく建て続ける」ことがサステナブルなわけはなく、その背後にある成長を前提とした経済の仕組み、それに伴う社会構造自体を見直す必要がある。今回のビエンナーレはこれらの問題に立ち向かい、新しい時代を「建て直す」ための研究や教育、コミュニティの再生やサポートなど、包括的な「建築の仕事」が世界各地から提示されている。若い世代からは「希望を感じた」と言う声が多く聞かれた。
毎回、活躍を見せる日本勢だが、アフリカ、アジアなど「グローバルサウス」からの展示が急増したなか、今回は日本館以外での展示が見られず、日本館の展示も全体の中では国際性を欠いた印象だった。ビエンナーレのほかにもさまざまな関連企画があるが、ジャルディーニ横の〈マリナレッサ庭園〉で開催中の『Time Space Existence』では、藤貴彰(三菱地所設計・tyfa)によるコーヒーかすなど廃棄物のサーキュラー素材で作られた茶室〈ベネチ庵〉が展示されている。