ノーマスクで晴れの入学式 交錯する期待と不安
■表情明快
「健康に気を付け、元気に学校に来てくださいね」
「はい!」
6日午後、東京都足立区立綾瀬小で行われた入学式。小坂裕紀統括校長の呼びかけに、150人あまりの新入生たちは元気よく応えた。ほとんどの児童がマスクをはずし、その表情からは晴れ舞台に臨んだ緊張や喜びがよくうかがえた。
区教育委員会の方針も踏まえ、出席者のマスク着用は個人や家庭の判断に委ねられた。教職員にはノーマスクも目立った一方、新入生の保護者や在校生を代表して参加した新6年生たちの大半はマスク姿だった。
長男(6)が入学した足立区の会社員、山本孝輔さん(41)は妻と一緒にマスクをして子供の姿を見守った。「節目の表情をしっかり撮影したいので、子供はマスクなしで出席させることにした」。中学1年となった長女(12)の入学式も7日にあるが、「年頃を考え、自分で判断するように伝えた」。
■授業も正常化
新学期からは、学校の教育活動でマスクは不要となっている。飛沫(ひまつ)の拡散を伴うため、感染リスクが高いとされる音楽の合唱などの授業でも、子供同士の間隔を十分に確保するなどの対策を施すことでマスクなしで行えるようになった。
新型コロナの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げられる5月8日以降には、さらなる制約の緩和が検討される。
学校現場の正常化にも期待が高まる。小坂統括校長は「新学期からの教育活動は、コロナ禍前に戻るという感覚ではない」と話す。
一斉休校など感染拡大に伴って学校の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった一方、全ての小中学生への学習用タブレット端末の配備や、公立小の35人学級化など指導環境には大きな前進があった。
「制約のなかでどんな教育ができるのかと自問自答して成長した教員も多い。精いっぱいの教育活動をしてきたし、これからもしていく」と意気込んだ。
■「次の波が不安」
ただ、次の流行によって、教育活動がまた翻弄されないかという懸念が尽きないのも事実だ。
厚生労働省にコロナ対策を助言する専門家組織が5日に行った会合では、新規感染者数が全国的に下げ止まり、増加に転じた地域も多いことが報告された。
名古屋工業大の平田晃正教授らのグループによる試算では、都内では5月上旬から中旬に新たな感染ピークを迎えるとの予測も示されている。感染の収束はまだ見通せない。
この日、入学式が行われた都内にある別の公立小の女性教員(39)は「マスクがないに越したことはないが、次の波が来るといわれると不安にもなる。まだまだマスク姿の同僚も多い」と語り、新学期もしばらくはマスクをつけて教壇に立つ考えを示した。