子ども時代の「ピアノのコンクール」賞歴にどれほどの意味があるのか?…「コンクールビジネス」のウラ
前編記事『あなたの子どもに「ピアノのコンクール」は本当に必要? 日本人のコンクールに対する「異常な信仰心」』に続き、オランダで演奏活動を行う傍ら、小さな子どもにピアノを教えている千原ビットナーさとみさんによる寄稿。「ピアノのコンクール」のメリットとデメリットとは。
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もし、あなたがお子さんを本気でピアニストに育てたいと考えているとしたら、クラシック演奏家の世界において、幼少期のコンクールの輝かしい賞歴が羅列された経歴には全く意味がないことをお伝えしたいと思います。
それよりも、演奏家になって「いまどれくらい弾けるのか」「最近国際コンクールで入賞したのか」「今までどこのホールで弾いたのか」といったことのほうが、はるかに重要です。要するに、子どもの頃の賞歴に箔が付くのは、最長でも20歳ごろまでのわずかな期間に過ぎないのです。
それでもなお、「幼いころからコンクールを受けたほうが舞台慣れをするから」と考える方がいるかもしれません。
しかし、人前で演奏することに慣れるのを目的にするのであれば、年に一度や二度ではなく、発表会や弾き合い会、グループレッスンを頻繁に開催するなど、他にも方法はあります(たとえば筆者の指導教授は、1か月に1度の頻度で、門下生が新しく用意した曲を弾く発表会を開催していました)。
そもそも、型にハマらない演奏ができる創造力の高い子どものほうが、稀有で重宝されるべきです。ところが、それぞれのピアノコンクールには「そのコンクールでウケる演奏」というものがあり、そこからはみ出してしまうような、個性溢れる子どもが入賞できることは少ないものです。
また、コンクールだと、審査員全員に満遍なく好まれる――すなわち、批判される箇所が少ない演奏が選ばれやすくなります。
ここで最も懸念されるべきは、コンクールが子どもたちにとって最も成長できる黄金時代を犠牲にする可能性があるという点です。