村上隆によるNFT作品、初の展覧会がNYで開催。
1980年の創設以来、今や世界16か所にギャラリーを持つガゴシアンは、現代美術界に最も大きな影響を与えるギャラリーの一つである。ガゴシアンで村上隆が記念すべき初展覧会を行ったのは、今から15年前の2007年のこと。村上自身にとって大きな意味をもつガゴシアンでの8年ぶりに個展、しかもガゴシアンにとってはこれが初のVR展、という意義深い展覧会がついにスタートした。
展覧会『歴史を射抜く矢』は、ガゴシアンがNYアッパー・イーストサイドにもつ2つのギャラリー、976と980マディソンアヴェニューのフロア3か所で行われている。まずは〈976マジソン〉の1階に足を踏み入れると、こちらを見つめるキャラクター達が壁にズラリ……〈CLONE X〉プロジェクトのアバターだ。
〈CLONE X〉は、クローン化した人間をテーマに、RTFKT(アーティファクト)と村上隆のコラボレーションで2021年10月に生まれたNFTアート作品。RTFKTはバーチャルスニーカー(オンラインの世界でのみ着用可能なスニーカー)のブランドで、2020年1月に3人の若者が立ち上げ、2021年12月にナイキが買収した事でも大きな話題となった。その〈CLONE X〉プロジェクトに関連する作品群が世界で初めて展示されている。
現実世界に出現したメタバース上のキャラクターに、画像・動画投稿アプリ「スナップチャット」をかざすと、その瞳がキョロキョロと動き出す。デジタル・モデリングされたアバターのペインティング・シリーズに加えて、等身大の彫刻作品にも出会うことができる。
そしてガゴシアン・ギャラリーの〈980マディソン〉5階スペースに出現するのが、NFTプロジェクト〈〉の関連作品だ。ピンクと白を基調にした、初期のフラワーをモチーフにしたものから、先日お披露目された、色彩も表情も多彩な作品まで幅広く楽しむことができる。人の”煩悩”と同じ数、108個のフラワーに埋めつくす壁はまさに圧巻。
「スナップチャット」をかざして歩き回っていると、足元から草がニョキニョキと飛び出し、フラワーが目の前にビュンビュン飛んでくる。来場者はみんなつい夢中になって、足が止まらない。