ステンドグラスを透過した光、息をのむ幸運の時 聖ザビエル天主堂
この日朝、真っ先に向かった聖ザビエル天主堂は、京都・河原町三条から移築され、今年で50年を迎えたカトリックの教会堂。
正面玄関から中に入ると天井の高さが最大約12メートルもある開けた空間が広がる。ほの暗い堂内に入ってすぐ横に薔薇窓は台に立てかけられて展示されていた。近くの壁のステンドグラスを透過したカラフルな陽光に照らされ輝いていた。
窓は直径3・6メートルの円形。放射状に伸びた木枠の中に色ガラスがはめ込まれ、巨大な花びらのように見える。色ガラスには、白ペンキで精巧な草花模様が描かれている。移築のため解体した際に建物の正面上部から取り外された。より美しく見える撮影位置を探るうち、陽光はどんどん移っていく。季節や天候によって違う表情を見せる光の芸術。出合えて幸運だった。
グレゴリオ聖歌が流れる中、交差してアーチを描く重厚なリブ・ボールト天井や四方の壁面を彩るステンドグラスが、荘厳な雰囲気を醸し出す。
十字架を右手に持ったフランシスコ・ザビエル像を中央に9人の聖像が並ぶ内陣の中に許可を得て入ることができた。そこで、司教の椅子にある紋章に目が止まった。古屋義之・初代司教の紋章という。よく見ると、京都の「京」の文字と比叡山がデザインされているのが分かる。豪華な祭壇や聖櫃(せいひつ)には、聖書にもよく出てくるブドウやザクロなどの装飾が施されていた。
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取り壊される運命だった建物を移築・復元し、保存する博物館明治村は、1965(昭和40)年に開村した。「神は細部に宿る」という。細やかに施された貴重な意匠や知られざる魅力をカメラで切り取って伝える。【兵藤公治】
◇聖ザビエル天主堂
16世紀に日本へ初めてキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルが京都に来たことを記念して1890(明治23)年、京都市中京区河原町三条に建てられた。設計は東京の在日宣教師、施工は日本人の大工が担ったとされる。外観はゴシック様式だが、瓦ぶきの切り妻屋根が日本的要素を感じさせる。堂内の柱などにケヤキがふんだんに使われている。1967(昭和42)年に解体、73(昭和48)年に移築された。