乱歩魅了した富山・魚津の蜃気楼 書籍や写真で紹介
「押絵と旅する男」は乱歩の代表作の一つで、押し絵細工の美女に恋をした男の夢幻的な物語。魚津で蜃気楼を見た「私」が帰りの列車で、一枚の押し絵を窓に向けている男と会話する場面から始まる。乱歩は1927年に魚津を訪れ、自分の目で蜃気楼を見ることはできなかったが、住民から話を聞き、着想を得たことを自伝に記している。
同展は8月下旬から2カ月間開催され、好評だったため、展示内容を一部変えて、11月11日から後期展を企画した。戦中戦後の6年間、福光町(現富山県南砺市)に疎開して魚津市にも訪れたことのある板画家、棟方志功(1903~75年)が挿絵をつけた乱歩の限定本「犯罪幻想」や、乱歩が魚津を旅したことがわかる自伝「探偵小説四十年」などを展示している。同図書館の初道ゆかり館長は「『押絵~』は魚津の蜃気楼が見せる魔力。作品を堪能してほしい」と話す。
後期展では、同じく蜃気楼に魅了された国文学者の池田弥三郎(1914~82年)の最後の著書「魚津だより」(毎日新聞社)なども展示している。池田は1980年、新設の洗足学園魚津短大(2002年閉校)に主任教授として招かれ、赴任後まもなく初めて蜃気楼を目にした。
同図書館(0765・22・0462)は月曜と第4木曜が休館。【萱原健一】