グランマ・モーゼス、大山エンリコイサム、そして谷口ジロー。今週末に見たい展覧会ベスト5
エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したメディアを横断する表現により、現代美術の領域で注⽬を集めるアーティスト、⼤⼭エンリコイサム。その最新の個展「Paint
Blister」が、2月25日に東京・恵比寿にあるNADiff a/p/a/r/tで開幕した。
1970~80年代のニューヨークで始まったライティング文化から影響を受け、その特有の線の動きを抽出し、再構成することで⽣み出された独⾃のモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」(QTS)を国内外で発表してきた大山。
本展では、ストリートアートの考察から得られた「ペイントブリスター」のコンセプトを軸に、新たなインスタレーションや壁⾯作品が展示される。壁⾯にはブリスターを施し、⼤学院の修了制作で発表した初期作《FFIGURATI
#9》を展⽰。また、地上のガラス壁⾯には、カッティングシートを素材とした6メートルを超える新作のQTSを会期中限定で展⽰する。
会期:2022年2月25日~3月21日
会場:NADiff a/p/a/r/t 1階と地下1階 NADiff Gallery
住所:東京都渋谷区恵比寿1-18-4
電話番号:03-3446-4977
開館時間:13:00~19:00
休館日:月~水(祝日は開館)
料金:無料
70代で描き始めたアメリカの国民的画家。「グランマ・モーゼス展」(世田谷美術館)
モーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)の愛称で親しまれるアメリカの画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860~1961)。その生誕160年を機に特別に企画された大規模回顧展「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」は、世田谷美術館で今週末まで。
人生の大半をアメリカの片田舎の農婦として過ごしていたたグランマ・モーゼス。妹の勧めによって75歳になってから本格的に絵に取り組み、100歳にいたるまでひたすらに古き良きアメリカの農村風景を描き続けた。
そんなグランマ・モーゼスの画業と人生を、絵画約80点を含む約130点の作品・資料でたどる展覧会。アメリカ国外初公開となる作業テーブルや、実際に使用していたキルト、孫のためにつくったワンピースなど、モーゼスの私生活が垣間見える資料も展示され、生活のなかで生まれた絵画を体感できる。
会期:2021年11月20日~2022年2月27日
会場:世田谷美術館
住所:世田谷区砧公園1-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00
料金:一般 1600円 / 65歳以上 1300円 / 大学・高校生 800円 / 小・中学生 500円 ※日時指定制
現地制作の新作を発表。vug「plum」(HARUKAITO by island)
東京・神宮前のギャラリー「HARUKAITO by island」で、アーティスト・vugの個展「plum」が開催されている。
vugは1988年生まれで、4歳の頃に描いた絵を褒められたことをきっかけに絵を描き始めた。グラフィティーとの出会いを経て、現在はドローイングやコラージュの手法で、ギャラリーでの発表やタトゥー、ファッションといったジャンルを超えた制作活動を追求している。無意味で違和感のある作品や自身の日常の一コマを作品にするなど、vugにとって作品は日記である。
最近の活動として、2021年に静岡県熱海市で開催された「ATAMI ART GRANT」に参加し、CURATION
HOTELの壁に壁画を制作。また今年、名古屋に新しくできたCO&CO Nagoyaの壁画と展示「au
miliu」も行った。今回の個展では、vugが現地で制作し新作を発表。切れ味鮮やかな展示が展開される。
会期:2022年2月25日~3月13日
会場:HARUKAITO by island
住所:東京都渋谷区神宮前6-12-9 BLOCK HOUSE 2F
電話番号:03-6318-2003
開館時間:13:00~19:00 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:月~水
料金:無料
『神々の山嶺』や『孤独のグルメ』も。「描くひと 谷口ジロー展」(世田谷文学館)
日本はもとより、海外にも多くの読者を持つ漫画家・谷口ジロー(1947~2017)。その作品世界を貴重な自筆原画など約300点で紹介する展覧会「描くひと 谷口ジロー展」は、東京の世田谷文学館で今週末までの開催だ。
谷口の作品を6つの章と1つの特設コーナーによって年代別に紹介。多彩なテーマと向き合いながら、谷口がいかにマンガ表現を深めていったのかをたどる展覧会となっている。
青年コミック誌に多くの作品を発表しながらも、フランスのバンドデシネと出会いその描写を吸収するなど、表現の幅を広げていった活動の初期から、関川夏央との共作『坊っちゃんの時代』、日常のなかの心の機微を描いた『歩くひと』や『孤独のグルメ』、そして大自然の驚異を巧みに描いた『神々の山嶺』など、幅広いその作風を原画や資料とともにたどることができる。
会期:2021年10月16日~2022年2月27日
会場:世田谷文学館
住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10
電話番号:03-5374-9111
開館時間:10:00~18:00(入場およびミュージアムショップの営業は17:30まで)
料金:一般 900円 / 65歳以上・大学・高校生 600円 / 小・中学生 300円
2つの生物から国家のアウトラインを探る。渡辺志桜⾥「Nipponia nippon」(SYP Gallery)
東京・曙橋の「SYP GALLERY」で、渡辺志桜⾥の個展「Nipponia
nippon」が開幕。渡辺は1984年東京都生まれ。2015年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業後、17年に同大学大学院を修了。昨年開催された、Chim↑Pom・卯城竜太キュレーションによる個展「べべ」(WHITEHOUSE、東京)での展示も注目された気鋭の作家だ。SYP
GALLERYでは前身にあたるS.Y.P-Artists run space in Tokyo-にて個展「sweet doughnut」を開催した。
代表作でもあるインスタレーション作品《サンルーム》では、自身にとって身近な遊び場であった皇居から採取された植物、魚、バクテリアなどを別々の水槽に分離させ、それぞれをつなぎ合わせ水を循環させることで、自動の生態系をつくり出した作品だ。
本展で渡辺は日本において特異な2つの生物に焦点を当て、新たな試みに取り組む。循環や人類と人類以外の生命、無機物などの複雑な絡み合いのなかで、資本主義や国家の思惑などの力の作用がどのように及んでいくのかとともに、日本という国家のアウトラインを探るものとなっている。
会期:2022年2月24日~3月20日
会場:SYP Gallery
住所:東京都新宿区住吉町10-10
開館時間:13:00~20:00
休館日:月~水
料金:無料