歴史ある屋敷「対局と親和性」…竜王経験者・豊島将之九段が語る第36期七番勝負「決戦の地」
豊島九段は2019年の第32期に広瀬章人八段に挑み、4勝1敗で竜王を奪取した。第33期は羽生善治九段の挑戦を4勝1敗で退けたが、第34期には藤井聡太竜王に4連敗を喫して失冠した。
過去3度の七番勝負全てで激闘が繰り広げられたのは、第1局のセルリアンタワー能楽堂(東京都渋谷区)と第2局の仁和寺(京都市)だ。
能楽堂で印象に残る対局は、「入場の仕方が独特で、緊張感がいつも以上にありました」という19年の広瀬八段との戦い。「何とか最後で逆転して逃げ切った。内容的に手応えはないが、最初に勝てたことは大きかった」。竜王初戴冠(たいかん)へ続く始まりの地となった。
一方、仁和寺での思い出深い対局は20年の羽生九段戦。「二転三転し、シリーズ一番の熱戦でした」。対局場の宸殿は普段は薄暗いが、対局時だけ特別に多くの照明がともされる。「お寺の方が『こんなに明るい状態でふすま絵を見るのは初めてです』と」。豊島九段は、恐縮しつつ歓待に感謝した体験を明かす。