陶芸家アダム・シルヴァーマンと〈いけばな草月流〉のコラボプロジェクト。
自身の暮らすカリフォルニアや、夏の家とスタジオがあるロードアイランドのように、個人的な思いと繋がりのある州は容易に素材が揃ったという。しかしアダムにとってこの規模でアメリカ全土に目を向けたのは初の試み。ちょうどパンデミックで閉鎖されていく日常の一方で、素材収集の交信網は広がっていった。
「友人の友人、という近いところから、各地の土砂採掘会社への問い合わせや、インスタグラムでの公募で集まった素材まで。隔離を要されていた日々でしたが、本当に沢山の人との交流を可能にしてくれたプロセスでした」
試行錯誤の結果、全部の土をブレンドした独自の釉薬を作り、木灰は窯の中に吹き付けてアクセントとすることに。仕上がった56点の器を使った最初のショーケースに、アダムはまず、〈いけばな草月流〉ロサンゼルス支部の作家たちを招いた。草月流は歴史的にもジョン・ラウシェンバーグやジョン・ケージなどの現代美術家や表現者たちとのコラボレーションを行ってきたことでも知られる流派だ。56の州とテリトリーそれぞれをテーマに作られた生け花たちとの対話が、アメリカ地図に則って配置された会場に色と華を添えている。
今回花器として使われたこの56点の器の他に、アダムは56の皿、ボウル、カップからなる食器セットをも作った。
「器を囲んで多彩なテーマの食事をその土地の食材で企画し、多分野の客人をテーブルに招く。この企画は食の運動家スコット・アルヴス・バートンと一緒にキュレーションしていきます」
アメリカという巨大な国の隅々から集められた素材を使うことで、多様なバックグラウンドを持つ人々が共通性に気づく。そのきっかけとなる「Common Ground」がどんな軌跡を残していくか、楽しみだ。