ホックニー、テート、「エルマーのぼうけん」まで。今週末に見たい展覧会ベスト11
現代でもっとも革新的と言われるアーティストのひとり、デイヴィッド・ホックニー(1937~)。その日本における27年ぶりとなる大規模な個展が東京都現代美術館
で開幕する。
全8章で構成される本展は、イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、近年の風景画の傑作「春の到来」シリーズや新型コロナウイルスによるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作まで約120点の作品が展示される。
また、ホックニーの故郷であるイギリス・ヨークシャー東部で制作された、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画《春の到来
イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート
2011年》(2011)は、今回日本初公開。さらに日本初公開となる大判サイズのiPad作品12点も、本作にあわせて展示される。
会期:2023年7月15日~11月5日
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3F
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日、9月18日、10月9日は開館)、7月18日、9月19日、10月10日
料金:一般 2300円 / 大学生・65歳以上 1600円 / 中・高生 1000円 / 小学生以下無料
原画やぬいぐるみ、体感型展示も。「エルマーのぼうけん」展(PLAY! MUSEUM)
ルース・S・ガネットが文を、ルース・C・ガネットが挿絵を手がけた物語シリーズ「エルマーのぼうけん」の原画や人形を展示する展覧会「エルマーのぼうけん」展が東京・立川の
PLAY! MUSEUMで開催。
「エルマーのぼうけん」は、どうぶつ島にとらわれたりゅうの子を助けに行く、9才の男の子エルマーの冒険物語。1948年から51年にかけて『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』(文
ルース・S・ガネット、挿絵 ルース・C・ガネット、日本語版は福音館書店刊)の 3冊の物語がアメリカで出版された。
本展では、アメリカ・ミネソタ大学図書館のカーラン・コレクションが所蔵する約130点の原画を日本初公開。70年以上前に描かれた色鮮やかな表紙や地図、鉛筆による細密な挿絵などが展示される。また、S・ガネットが所蔵する手づくりの本の原型となった3冊のダミー本やイラスト、挿絵を描くためにつくったりゅうの人形など、貴重な制作資料も初公開される。
会期:2023年7月15日~10月1日
会場:PLAY! MUSEUM
住所:東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2階
電話番号:042-518-9625
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円 / 中・小学生 600円 / 未就学児無料
「光」をテーマに作品を厳選。「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」(国立新美術館)
テートのコレクションから「光」をテーマに厳選された作品を紹介する展覧会「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」が、東京・六本木の国立新美術館
で開幕した。本展は、2021年に開館した浦東美術館
の開館記念展として上海で初めて開催された後、ソウル、メルボルン、オークランドで巡回開催されてきたもの。レポート記事はこちら。
本展では、18世紀末から現代までの約200年間に制作された約120点の作品が緩やかな時系列に沿って一堂に公開。また、各章(第3章と第4章を除く)で2000年以降につくられた作品が様々な時代の作品とともに展示されているのも特徴のひとつとなっている。
先行巡回展で展示された作品に加え、本展ではエドワード・バーン=ジョーンズ、ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー、マーク・ロスコ、ジュリアン・オピー
、ゲルハルト・リヒターなどによる12点の作品が日本限定で展示されている。
会期:2023年7月12日~10月2日
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 2200円 / 大学生 1400円 / 高校生1000円
コミュニケーションを深く考える。「あ、共感とかじゃなくて。」(東京都現代美術館)
東京都現代美術館で、日常のコミュニケーションにあふれている「共感」に着目しつつ、これを相対化する展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」が開幕する。
本展は、SNSの「いいね!」や会話における「わかる」など、日常のコミュニケーションにあふれている「共感」に着目しつつ、あえてこれを避けることに焦点を当てている。参加作家は、元ひきこもりで当事者をケアする活動家・アーティストの渡辺篤をはじめ、有川滋男、武田力、中島伽耶子、山本麻紀子の5名。知らない人、目の前にいない人について考え、理解しようとして生まれた展示作品は、安易な共感に疑問を投げかけるものもあれば、時間をかけて深い共感に至るものなど様々だ。
本展は、鑑賞者に答えのない問いを考える機会を提供しながら、共感しないことは相手を嫌うことではなく、新しい視点を獲得し対話を始めるチャンスだと語りかけるだろう。会期中にはまた、哲学対話や子供に向けた読み聞かせ、引きこもりや不登校という状態にいる人々に向けた鑑賞ツアーなど、さまざまなイベントが予定されている。
会期:2023年7月15日~11月5日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(7月21日、7月28日、8月4日、8月11日、8月18日、8月25日は~21:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日、9月18日、10月9日は開館)、7月18日、9月19日、10月10日
料金:一般 1300 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 900円 / 中高生 500円 / 小学生以下 無料
「マテリアル」と「素材」からデザインの本質を探る。「Material, or 」(21_21 DESIGN SIGHT)
人間と「マテリアル」の関係性を「地球」という広大な文脈から読み解くことで、そのつながりを再発見することを試みる企画展「Material, or
」が東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでスタート。レポート記事はこちら。
本展では、通常同義である「マテリアル」と「素材」を分けて考えている。素材の前にマテリアルがある、という解釈のもと、マテリアルが素材になるまでのあいだに着目することで、「そもそもどこからどこまでがデザインなのか」という新たな着眼点を提示している。
展示台や順路などが存在せず、会場内に作品が点在しているのが特徴だ。そのため、空間内を散策しながら作品を発見・観察するという能動的な鑑賞体験が促されている。
会期:2023年7月14日~11月5日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
電話番号:03-3475-2121
開館時間:10:00~19:00 ※入場は18:30まで
休館日:火
料金:一般 1400円 / 大学生 800円 / 高校生 500円 / 中学生以下無料
テーマは「イメージの実験場」。「浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA」(MMoPほか)
2018年以降、御代田町と株式会社アマナが合同で開催している「浅間国際フォトフェスティバル」が、今年は7月15日~9月3日の会期で行われる。
2021年夏にオープンした複合施設「MMoP(モップ)」がメイン会場。「イメージの実験場」をテーマに、クリスト(プエルトリコ/アメリカ)&アンドリュー(南アフリカ)をはじめ、ジュリー・コックバーン(イギリス)、アントニー・ケアンズ(アメリカ)、ニコ・クリジノ(南アフリカ)、ハナ・ウィタカー(アメリカ)、西野達、柿本ケンサクなど世界中の写真家による作品が出品予定だ。
写真フェスティバルならではの大型展示や、意外な支持体によるユニークな手法、またAIを駆使した最先端の作品など、御代田の自然を散策しながら、屋内外に展開される作品をインタラクティブに、五感で楽しむ場を目指される。
会期:2023年7月15日~9月3日
会場:MMoP(モップ)
住所:長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1
開館時間:10:00~17:00(屋内展示の最終入場は16:30まで)
休館日:水(ただし8月16日は開館) ※屋外展示は自由に鑑賞可能
料金:一部有料
横山大観から杉本博司までの日本画展。「シン・ジャパニーズ・ペインティング」(ポーラ美術館)
新館長就任で話題を集める箱根のポーラ美術館
が、同館で13年ぶりとなる日本画の企画展「シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、杉山寧から現代の作家まで」を開催。会期は7月15日~12月3日。
2010年にポーラ美術館が近現代の日本画コレクションを紹介する展覧会を開催して以来の日本画展となる本展は、近代の「日本画」を牽引した明治、大正、昭和前期の画家たちや、杉山寧をはじめとする戦後の日本画家たちの表現方法、そして現在の「日本画」とこれからの日本の絵画を追究する多様な作家たちの実践の数々にあらためて注目し、その真髄に迫ろうとするものだ。
展示は「プロローグ 日本画の誕生」「第1章 明治・大正期の日本画」「第2章 日本画の革新」「第3章 戦後日本画のマティエール」「第4章 日本の絵画の未来―日本画を超えて」で構成。主な出品作家はプロローグが
橋本雅邦、川端玉章、狩野芳崖、高橋由一、浅井忠、小山正太郎、第1章が横山大観
、菱田春草、下村観山、浅井忠、川村清雄、田村宗立、第2章が横山大観、菱田春草、菊池契月、小杉放菴(未醒)、冨田渓仙、岡田三郎助、岸田劉生、
藤田嗣治(レオナール・フジタ)、第3章が松岡映丘、山本丘人、髙山辰雄、東山魁夷、杉山寧、加山又造、今井俊満、堂本尚郎、第4章が山本太郎、谷保玲奈、久松知子
、春原直人、三瀬夏之介、荒井経、マコトフジムラ、野口哲哉、深堀隆介、山本基、天野喜孝、李禹煥、蔡國強、杉本博司となる。
会期:2023年7月15日~12月3日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
電話番号:0460-84-2111
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1300円 / 中学生以下無料
開館10周年記念展。「湖の秘密 ―川は湖になった」(市原湖畔美術館)
市原湖畔美術館
がほとりに建つ高滝湖(たかたきこ)と、市原市を南北に縦断し東京湾に注ぐ養老川。これらをめぐる地域の歴史、地勢、民俗を掘り下げ、様々なメディアの8人のアーティストたちが美術館内外の空間にサイトスペシフィックな作品を展開する展覧会「湖の秘密
―川は湖になった」が同館にて開催。会期は7月15日~9月24日。
例えば、110戸の村が湖の底に沈むこととなった高滝湖の一連の様子をカメラに収めていた出品作家の加藤清市
だ。本展では、ダムによる新しい生活への希望と古を失う人々の寂たる思いを写した500枚を超える写真から選ばれた、30余点による《水没した村の痕跡》が展示される。
ほか参加作家は、岩崎貴宏、大岩オスカール、尾崎悟、菊地良太、南条嘉毅、松隈健太朗、椋本真理子。
会期:2023年7月15日~9月24日
会場:市原湖畔美術館
住所:千葉県市原市不入75-1
電話番号:0436-98-1525
開館時間:10:00~17:00(土祝前 9:30~19:00、日祝 9:30~18:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし祝日の場合は翌平日)
料金:一般 1000円 / 大高生・65歳以上 800円
米澤柊、初の大規模個展。「Shu Yonezawa Solo Exhibition “Happy Birth”」(PARCO MUSEUM TOKYO)
アニメーションにおける残像表現の技法「オバケ」に着目することで、表現の新次元を切り拓くアニメーター/アーティストの米澤柊(よねざわしゅう)。その初の大規模個展「Shu
Yonezawa Solo Exhibition “Happy Birth”」が東京・渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOで7月24日まで開催されている。
米澤は現在のデジタルアニメーションにおけるキャラクターの身体性と、現実空間の生き物が持っている心の身体性と感情を表現するとともに、それらアニメーションが生きる空間の空気感を制作してきた。
本展タイトルにもある“Happy
Birth”には、米澤による複合的なメッセージが含まれている。人々の誕生を祝うことは、それぞれの生きづらさから目を背けないことでもあり、米澤のアニメーション作品は、穏やかさと優しさが内包された作品群となっている。また、代表作とともに初公開される最新作「ハッピーバース」は、会場全体の音場設計と連動する意欲作だという。
会期:2023年7月14日~24日
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO4F
開館時間:11:00~21:00(24日は~18:00)※入場は閉場の30分前まで
料金:500円 ※小学生未満無料
物語はいかに描かれてきたか。「物語る絵画」(根津美術館)
東京・青山の根津美術館で絵画化された物語に着目した展覧会「物語る絵画」が開催される。会期は7月15日~8月20日。
源氏物語や平家物語など人気を博した物語は、成立後ほどなくして絵画化がはじまったと考えられている。冊子の挿絵から絵巻物や画帖へ、さらには絵のみが独立して掛軸や屏風などの大画面にも描かれるようになった。それらは複数の場面を組み合わせたものもあれば、特定の一場面のみが画題として定着したものもあり、表現形式は多種多様だ。
本展は、物語の範囲を仏教説話や能、幸若舞(こうわかまい)やお伽草子などにまで広げる。絵画化された様々な物語を味わいながら、いにしえの人々が物語のどのような場面に心惹かれたのかということにも注目したい展覧会だ。
会期:2023年7月15日~8月20日
会場:根津美術館
住所:東京都港区南青山6-5-1
開館時間:10:00~17:00
料金:一般 1300円 / 学生 1000円 / 中学生以下 無料 ※オンライン日時指定予約
金工に息づくプロダクトデザインの精神。「中川 衛 美しき金工とデザイン」(パナソニック汐留美術館)
金沢を拠点に活動する金工作家・重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)の中川衛(1947~)を紹介する。
中川は金沢美術工芸大学で工業デザインを専攻。1971年に大阪の松下電工(現パナソニック)に入社し、美容家電製品などのデザインに携わった。27歳で帰郷した後、石川県立美術館で行われていた鐙の展覧会を見たことを機に、地元の伝統工芸である加賀象嵌に魅了される。そして彫金家の高橋介州(1905~2004)に入門し、石川県工業試験場に勤務しながら修業した。
本展は中川が追求する象嵌技法の初期から現在までの金工作品を辿るとともに、プロダクトデザイナー時代の仕事、金工の道に進む原点となった加賀象嵌の名品、次世代作品まで、作品と資料を合わせて約100点により、中川の創作に息づくデザインの精神と、伝統技法の継承を目指す様々な取り組みを見つめる。
会期:2023年7月15日~9月18日
会場:パナソニック汐留美術館
住所: 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:水(9月13日は開館)、8月13日~17日
料金:一般:1200円 / 大学・高校生 700円 / 中学生以下 無料