「理科離れ」解消なるか 成果問われる学校現場 全国学力テスト
「子供たちの意識に前回から変化があるのか把握する必要がある」。この日のテスト実施後、文部科学省の担当者は理科離れへの警戒感をにじませた。
24年度から導入された理科は今回で4回目。子供への質問調査では毎回、理科に対する興味や関心を確認している。30年度に行われた前回調査では、「理科の勉強が好き」と答えた中3は62・9%。その生徒らが小6の児童だった前々回(27年度)の83・5%から大きく減少している。
観察や実験といった体験的学習が多い小学校から、理論的な学習が増える中学校へ進むにつれ、理科に対する興味は薄れる傾向がある。学校側も実生活の事象と関連付けた授業を行うなどしているが、理科離れに歯止めがかかっていない。
課題は学力でも指摘されている。日本から小学4年と中学2年の約8600人が参加した2019年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS=ティムズ)では、思考力や表現力の不足が浮き彫りになった。
例えば中2理科で、真空状態のガラス容器内につるした携帯電話の着信音は容器外に聞こえるかを答え、理由を記述する設問の正答率は56%。国際順位は4位だが、首位の台湾(正答率78%)とは大きな開きがあり、記述式問題の正答率を上げる指導が求められた。
千葉大教育学部教授で同学部付属中の校長も務める藤川大祐氏が理科離れの対策として提案するのは、外部講師を招いた授業だ。「小中の教員が、地域で理数教育を重点的に行う文科省のスーパーサイエンスハイスクール指定校の教員と連携するなど、最先端の科学的知識に触れる機会をつくることで、理科学習が何を目指しているのか子供たちに理解を促せる」
藤川氏によると、思考力や表現力の育成もICT(情報通信技術)化で加速が期待できる。「小中学生に1人1台配備された端末を使って実験の成果などを記述させ、それについて互いにコメントを書かせることが効果的だ」という。(玉崎栄次)